No43『僕とお姉さんの調査レポート』 三国三久

※講評内で作品の内容に触れております。

 致命的なネタバレにはならないように考慮していますが、

 一部・ミステリ的なギミックなどの種を割ることがあります。

 ご了承ください。

◇◇◇

https://kakuyomu.jp/works/16817330661909169940



白いワンピース。


いつしか「虫取りするガキをニコニコしながら眺めるお姉さん」のトレードマークとなった服装です。

ところが、本作に登場する奇人教授だか奇人探偵だかとしか思えないような口調をしたお姉さんの格好は、それとは大きく異なります。


曰く、「長袖、長ズボン、軍手、安全靴、ゴーグル、マスクの完全装備」――。


さらに普段着は白いワンピースだというのだから、どういう人なんでしょうね?


その正体については本編を読んでもらうとして――本作はニコ姉だけではなく、虫ガキもまた、特異な立場となっているのが目を引きます。


虫ガキが赴く虫取りの場所は、夏休みの田舎の森ではなく、なんと国鉄地下の旧路線駅。

そこで出会うのは、見るもおぞましい「虫人間」!


思えば、私たちが当たり前のように歩いている都市部の地下には、下水道や地下道といった空間が蜘蛛の巣のように張り巡らされています。

しかし地上を安穏と生きるあいだは、地下にどんなに薄汚れたものがあっても、見たくもないものは見ないことにして蓋をしています。

そこに「無い」ものとして、存在を意識することすらないのです。


ですが、ふとした瞬間にその「気配」を感じることがあるはずです。


日常に生きる我々が、ほんの少しだけ「気配」を覗きにいくお話――本作はそういった物語といえるでしょう。

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