No42『鶏と卵はカブトムシの夢を見るか』 霧崎圭
※講評内で作品の内容に触れております。
致命的なネタバレにはならないように考慮していますが、
一部・ミステリ的なギミックなどの種を割ることがあります。
ご了承ください。
◇◇◇
https://kakuyomu.jp/works/16817330661806781151
「卵が先か、ニワトリが先か」
これはホテルの朝食バイキングで「朝からフライドチキンは重たいかなぁ……とりあえずスクランブルエッグでお腹を慣らそうかしら」と悩んでいるわけではありません。
卵とニワトリという「互いが互いの原因であり、結果でもある」状態の場合には、どちらが存在に先立つのか――という、有名な思考実験を指しています。
本作は「虫取りするガキをニコニコ眺めるお姉さんの謎」作品です。
つまり、虫ガキとニコ姉が登場します。
さらに――卵とニワトリ――原因と結果――の、両方が作品内に登場します。
そう考えてみると、人によってはタイトルを眺めただけでも、作中に登場する虫ガキとニコ姉の正体について想像がつくかもしれません。
しかし、その先にはさらなる「謎」が横たわっています。
ひょっとしたら、生涯をかけても解くことができないかもしれない「謎」です。
話は変わりますが――。
人が生涯に読むことができる本は、多くても一万冊といったところでしょうか。
読書や勉学というものは、最初は新しいことを知るのが楽しくて楽しくて仕方がないものですが、続けていくうちに、どんな道であっても果てがないことを自覚していきます。
そして、ある時期からは「本を選んで読む」ということは「別の本を読まないことを選ぶ」ことであると気づくものです。
人の身では、すべての理を知ることはできません。
本作の最後にニコ姉はある「選択」をしました。
先が見えない道にあっても、常に人は「選択」を続けていくしかない――これは決して自暴自棄や諦観ではなく、ただ進むことが生きる原動力になっていくものだと、そう感じさせる一編でした。
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