No40『ほるにっせ』 ムラサキハルカ

※講評内で作品の内容に触れております。

 致命的なネタバレにはならないように考慮していますが、

 一部・ミステリ的なギミックなどの種を割ることがあります。

 ご了承ください。

◇◇◇

https://kakuyomu.jp/works/16817330661746521785



なんとも猟奇的な物語です。


タイトルにもある『ほるにっせ』とは、本作に登場する「虫取りするガキをニコニコしながら眺めるお姉さん」を示す言葉です――。

ですが、このいかにも民俗学的な響きをした不可解な言葉が持つ意味については、ある特定の分野について知識を持つ人にしかわからないでしょう。

(私も読後に調べて、初めて意味を知りました)


本作における虫ガキは、クワガタムシを捕まえるために、腐りかけのバナナを使った罠を仕掛けます。

確かにこれは虫を捕まえる有効な手段に思えますね。


もっとも――この罠はあまりに有効すぎたことで、「どんな大物がかかるかわからない」のが欠点となったわけですが。


そうして、罠には「獲物」がかかりました。


吐き気を催すような最悪の「食事」と、蠱惑的な魅力に満ちた「食事」。

自身がまるで餌に食いつく虫にでもなったかのように、破滅の気配を読み取ることができないまま、虫ガキはニコニコと笑みを浮かべる謎のお姉さんとの逢瀬を重ねていきます。


こうして見ると、本企画に集った虫ガキは、お姉さんのニコニコとした笑顔に様々な思いを託していったわけですが……必ずしも、その思いが叶えられるとは限りませんでした。


「虫取りするガキをニコニコ眺めるお姉さん」という光景は、熱気に惑う夏の陽炎が見せた一瞬の「幻」でしかありません。


その「幻」は期間限定であり――資格を失った者が手を伸ばしても、欲するものを持って帰れるという保証はないのです。

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