No38『少年はなぜ虫を取る、女はなぜ少年を追う』 Orville
※講評内で作品の内容に触れております。
致命的なネタバレにはならないように考慮していますが、
一部・ミステリ的なギミックなどの種を割ることがあります。
ご了承ください。
◇◇◇
https://kakuyomu.jp/works/16817330661827316195
「虫取り」。
虫を取って遊ぶ、というのは夏の風物詩であり、同時に生き物の命を弄ぶ――ある種、不道徳な娯楽でもあります。
本企画は「虫取りするガキをニコニコと眺めるお姉さん」にまつわる小説を募集したことで、多種多様な虫ガキが集まることになりましたが――その多くは、遊興のために虫取りをおこなう虫ガキでした。
もちろん、中にはやむにやまれぬ事情によって虫取りをしていた虫ガキもいましたが――それでも本作における主人公の少年のように、逼迫した状況のために虫取りに手を染めた虫ガキは稀有な存在でしょう。
なぜなら、少年にとって虫取りは遊びではなく――弟や妹にご飯を食べさせるための「生業」なのですから。
現代の日本では、子供が適切な教育を受けるために様々な支援が与えられています。
ですが、子供を養育する保護者にその意思がなければ……子供の元へ届く支援は、ごく限られたものとなってしまうのが現実です。
本来は子供を守る役目を持った保護者――親の庇護を受けることができない子供たち。
育児放棄(ネグレクト)の被害者である本作の主人公の虫ガキは、やむを得ず生きるための手段として、虫取りを始めとする様々な「生業」によって弟や妹を守ろうとしていました。
そんな虫ガキをニコニコと眺める、不気味なお姉さんが一人。
虫ガキにとって、お姉さんはどういった存在だったのか。
すべての「なぜ?」に答えが出たとき、二人の関係性はガラリと色を変えることになります。
虫ガキがいた、お姉さんがいた、二人の夏の日の終わり。
じめじめと湿った、生乾きの土の匂いが香り立つような空気――そんな気配が漂う作品でした。
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