No37『かいしゃくちがい』 さくご

※講評内で作品の内容に触れております。

 致命的なネタバレにはならないように考慮していますが、

 一部・ミステリ的なギミックなどの種を割ることがあります。

 ご了承ください。

◇◇◇

https://kakuyomu.jp/works/16817330661828806002



人間の生命力というのは、あれで大したものです。

これは死んだかな、まぁ死んでもいいかな――なんて思っていても、そう易々と死ねるものではない。


そう思っていたら、今度はあっけなく死んでしまう人もいる。

生きたいと切実に願う者ほど、その思いは裏切られてしまう。


需要と供給というものは、なかなか釣り合わない。

上手くいかないものですね。


さて、本作には樹海に虫取りにやってきた少年が登場します。

ですが、それよりも目を引くのは――まるで人間を、虫でも見るかのように観察する一人のお姉さんです。


お姉さんは怪我をしている虫ガキを、ただただ眺めています。

このお姉さんをどう「解釈」すればいいでしょうか。


その内心――「なぜ?」は本人の口から語られますが――その常軌を逸した動機は、かならずしも読者として理解できるものとは限りません。


「解釈」には限度があります。


血の通った生身の人間を自らの尺度で「解釈」できるという考えは、思わぬところで裏切られることがある。


さらに「解釈違い」は、時として致命的な結果をもたらす――。

そういった事態の、好例となる作品です。

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