No31『聞いた話だ』 鈴北るい

※講評内で作品の内容に触れております。

 致命的なネタバレにはならないように考慮していますが、

 一部・ミステリ的なギミックなどの種を割ることがあります。

 ご了承ください。

◇◇◇

https://kakuyomu.jp/works/16817330661658116697



『「虫取りするガキをニコニコしながら眺めるお姉さん」の噂』に続く、同一作者さんによる二作目の虫ガキ小説です。


「一番怖いのは人間」

いつしかホラーの定型句となったこの言葉ですが、個人的にはあまり好きではありません。


人間が怖いのなんてのは当たり前の話です。

幽霊、ゾンビ、吸血鬼、狼男――ホラーの歴史とは、人間が想像力をもって「人間以上に怖いもの」をゼロから生み出そうとする、試行錯誤と研鑽の歴史でもあります。


つまりは「一番怖いのは人間」という言葉は、言ってしまえば発話者の「想像力の欠如」を自白するに等しい――過激な物言いとなってしまいますが、そういった側面があるのは否めないでしょう。


さて、本作のキャッチコピーは「人間が一番怖いという話」ですが……。


いや、怖っ!


倫理観のブレーキのネジを外し、攻撃性と猟奇性を高めた、人間の一番よくないところだけを集めた一家が本作の主人公たちとなります。


最初はしっとりしたホラーだったはずなんですが――だんだんと様子がおかしく――気づいたら、機関銃にすら疑問を抱かなくなっていきます。機関銃?


振り返ってみると凄惨な話のはずなのですが、暴力に振り切れているせいで不思議と陰鬱さはなく、むしろスッキリとした読後感が特徴ですね。


聞いた話と言われても、こんな話を聞いても困るだけでしょう――ということで、最後に登場する語り部には深く同情します。

楽しい物語です。

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