No27『 「虫取りするガキをニコニコしながら眺めるお姉さん」の噂』 鈴北るい

※講評内で作品の内容に触れております。

 致命的なネタバレにはならないように考慮していますが、

 一部・ミステリ的なギミックなどの種を割ることがあります。

 ご了承ください。

◇◇◇

https://kakuyomu.jp/works/16817330661532597554



「虫取りするガキをニコニコしながら眺めるお姉さん」。


考えてみれば、ひどく説明的な文章です。

なにせ字面を読むだけでどんな存在なのかは一目でわかる。

不明なのは「なぜ?」という動機だけ、です。


故に、本自主企画「競作:虫取りするガキをニコニコしながら眺めるお姉さんの謎」が発足することになったのですが……たしかに、仮にニコ姉を「怪談」と解釈した場合、これほどまでに説明的であるというのはおかしな話です。


さて、本作の幕開けは――いい年をした大人二人が語り部となり、噂となっている「虫取りするガキをニコニコしながら眺めるお姉さん」を見ようと行動するとこから始まります。

まるで夏休みの自由研究のような面持ちですね。


ところが、探しても探してもニコ姉は現れません。

それどころか、虫ガキすらも。


すわ、このままでは競作のレギュレーション――そう、虫ガキとニコ姉が登場すること――を守ることができなくなってしまう。


そんな矢先に、あくまで無関係の他人でしかないと思われた語り部すらも「物語」に取り込まれていたことが判明します。


考えてみれば、人は誰もがかつては虫取りするガキであった可能性があり、またそれをニコニコと眺めるお姉さんであった可能性を内包している。


本企画に想定以上の数の作品が集まった理由。

それは、ひょっとしたら「虫取りするガキをニコニコしながら眺めるお姉さん」という「物語」の型は、誰にとっても他人事ではないから――そう感じる一品でした。

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