No26『またいつか、蝉がなく頃に。』 エース

※講評内で作品の内容に触れております。

 致命的なネタバレにはならないように考慮していますが、

 一部・ミステリ的なギミックなどの種を割ることがあります。

 ご了承ください。

◇◇◇

https://kakuyomu.jp/works/16817330661531288998



自分のことはわからなくても、他人のことになると冷静になってしまう。

そのような経験は誰しもがあることでしょう。


本作には「蝉におしっこをかけてやりたい」という、一見して馬鹿馬鹿しいような復讐心を抱えた少年が登場します。

そんな少年――虫ガキと出会ったお姉さんは、ニコニコと笑いながらも、当然のようにその行いを諭すことになりますが……。


「言霊」という表現があるように、人が人にかける「言葉」には不思議な力が宿るものです。

それは発した本人の思惑を超え、「言葉」をかけた他者に――あるいは「言葉」を発した自分自身に――深い影を落とすことになります。

ある意味で「言葉」というのは、本質的に制御不能なものであると言えます。


さて、本作は王道のミステリーとなっています。

一見して関係なさそうな事柄には意外な繋がりがあり、お姉さんと虫ガキの出会いによって「事態」には確かな解決がもたらされることになります。


ただし。お姉さんと虫ガキでは、各々に見えている現実が異なります。

またいつか、二人が再会できることはあるのでしょうか?

残念ながら、その決して可能性は高くはない――かもしれません。


それでも、二人の出会いは決して不幸なものではなかったはず。

そう信じたいと思わせる作品でした。

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