No25『「虫」取り』 さざれ

※講評内で作品の内容に触れております。

 致命的なネタバレにはならないように考慮していますが、

 一部・ミステリ的なギミックなどの種を割ることがあります。

 ご了承ください。

◇◇◇

https://kakuyomu.jp/works/16817330661516422493



「さっさとヤって、殺してしまおう」


そんな不穏なキャッチコピーの通り、本作に登場する虫ガキは今回の自主企画に集った虫ガキの中でも、飛び抜けてアンモラルな虫ガキとなっています。


なぜなら、この作品の虫ガキがするのは虫取りではなく、「虫」取り。

理由は不明ですが、「虫」と呼ばれ謂われなき差別を受けている集落――そんな場所に住むお姉さんが、本作における虫ガキのターゲットなのですから。


自分たちと同じ人間であるはずのお姉さんたちは、どうして鎮守の森に閉じ込められ、「虫」と蔑まされているのか……?

そんな「なぜ?」について虫ガキは両親に尋ねてみますが、明確な答えが返ってくることはありません。


肉感的で蠱惑的な存在感をもって、少年の情欲をかきたてるお姉さん。


そんなお姉さんは「なぜ?」ニコニコと虫ガキを眺めていたのか?

ギレルモ・デル・トロ監督の某ホラー映画を想起させるような予想外の「答え」に、感銘を受けると同時に、これはまぎれもなく「虫取りをするガキをニコニコ眺めるお姉さん」小説だったのだな……という納得を抱きました。


能において、無表情なはずの能面に表情を見いだすのは、お面を装着した演者の芝居はもとより、それを観劇するお客さんの想像力によるものだと聞いたことがあります。


本企画におけるお姉さんが「ニコニコと」多彩な表情を見せる、その理由の一端がこれなのかもしれません。

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