No16『少女不具合』 キングスマン

※講評内で作品の内容に触れております。

 致命的なネタバレにはならないように考慮していますが、

 一部・ミステリ的なギミックなどの種を割ることがあります。

 ご了承ください。

◇◇◇

https://kakuyomu.jp/works/16817330661431619281



キャッチコピーに「Ladybug」とあるように、テントウムシを題材とした虫ガキ小説です。


……この小説、おそらく意図してのものなのですが、とにかく読んでいるあいだは「居心地が悪い」作りとなっています。


この「居心地の悪さ」を生んでいる要因の一つは、語り部の少年の一人称視点パートにおける文体が「漢字の開き」「ルビ振り」などを利用して児童小説風に仕立て上げられているのに対し、その筆致で描かれる内容が非常にアンモラルなものとなっているからでしょう。


まるで子供が子供の無邪気さのままで蛮行を振るうさまを追体験するような、そのような読み心地を与える異色のホラー作品です。


さらに、後半では打って変わって登場人物が入れ換えとなる別視点で、前半で起きた事件の真実が示唆されます。


奇妙な箱庭のような「家」の中であった「虫取り」、その真実は何なのか。


最後の一行を読んだとき、あらためて思い出しました。


そうだ。


これは「ニコニコ眺めるお姉さん」の謎にまつわる企画だったのだと。


企画のレギュレーションに忠実ながら、しかし、そこで示されるビジョンの独自性は群を抜いている作品でした……。

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