No13『藪の外』 狂フラフープ

※講評内で作品の内容に触れております。

 致命的なネタバレにはならないように考慮していますが、

 一部・ミステリ的なギミックなどの種を割ることがあります。

 ご了承ください。

◇◇◇

https://kakuyomu.jp/works/16817330661281304323



子供は合理的な生き物です。

否――大概の人間は合理的な生き物で、常に各々が合理的だと判断した行動を取っています。


故に、非合理とは「世界の認識の狭さ」によって生じるもの。

認識が狭い者が取る行動は、当人にとっては合理的な行動であったとしても、大局的な視野でみれば非合理な行動となってしまうのです。


さて、本作における虫ガキはお姉さんのことが好きな少年です。

いつも虫取りをするガキをニコニコと眺め、虫にとっても詳しく、色んなことを教えてくれるお姉さんのことを大好きに思っています。


当然、少年がお姉さんのことを好きなように――お姉さんも少年が好きなのでしょう。


それが、虫ガキが認識する「世界の全て」でした。


ところが、すでに幼年期を終えた我々読者が本作を読んだ場合、そこで抱く感想は語り部である虫ガキとは異なるものとなるでしょう。


自他の境界。


「自分」と「他人」は違う生き物であるということ。

それを知っているが故に、読者は「お姉さんはなぜ虫ガキをニコニコ眺めていたのか」――明確な解答が出されることはない「答え」の一端に触れることができるわけです。


彼が「答え」を知ることは、もう無いかもしれませんが。

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