No12『蟲媒夏』 木古おうみ

※講評内で作品の内容に触れております。

 致命的なネタバレにはならないように考慮していますが、

 一部・ミステリ的なギミックなどの種を割ることがあります。

 ご了承ください。

◇◇◇

https://kakuyomu.jp/works/16817330661381274934



……怖い話です。


「子供の遊びに真剣に付き合うような大人がまともなはずがない」――たしかな共感と、わずかな不穏さを滲ませる魅力的な書きだしから始まる物語。


本作は、本当に怖い物語となっています。


印象的なのは、やはり「虫ガキをニコニコ眺めるお姉さん」――「ニコ姉」のビジュアルです。

本企画の投稿作に登場するニコ姉の共通点として「白いワンピースに麦わら帽子」という外見のお姉さんが多々見られる傾向がありました。


これはネット発の怪談ブームで人気になった「八尺様」のイメージなのか、あるいは日本人の原風景にある「夏休みに田舎で出会ったワンピースの女の子」からの着想なのか――いずれにせよ、このビジュアルが象徴するのは「非日常の象徴」、あるいは「異界への入り口」なのでしょう。


対して、本作で虫ガキたちの前に現れるお姉さんは……ただのお姉さんなのです。

ともすれば怪談の案内人には不釣り合いなほどに、生活感と日常の匂いを漂わせたニコ姉。


だからこそ、「なぜ?」が際立つ。

どうして……そんなお姉さんがニコニコと虫ガキを眺めているのか。


尚、本作の概要には「ミステリではなくホラーです」と注意書きが付されています。

個人的な所感としては、これは謙遜か、あるいは「罠」だと考えています。


本作はまぎれもなく、ニコ姉の「なぜ?」に明快で論理的な解答が出されるミステリです。


そして……本当に怖いミステリなのです。

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