第12話 風がため息をついているのが聞こえる
エミリー・ブロンテ作
額田河合訳
風がため息をついているのが聞こえる
秋のこの上もない悲しい声で
枯れた葉がうずたかくつもっている
春の花たちがかつて散りしいた大地に
この暗い夜が私を説きふせた
それで私は遠くさまよう
古ぼけた昔の思いがたちまち私の上におしよせる
獲物に群がるハゲタカのように
それらはかつて優しかった、かけがえのないものだった
だが今は、冷たく、喜びのかけらもない
つきまとうそれらの影も消え失せてくれればよかった
それらの輝きが私の額から消え去ってしまった時に
年老いた老人が子どもの柔らかさを
みずからに偽るようなもの
石のような、私の変わり果てた心が
いまさら腰をかがめてその群がる空想に挨拶したとて
願わくば、かつての喜びを失うのとひきかえに
かつての嘆きを忘却の中に消し去ってしまえるなら
いとしすぎる宝物たちの死とひきかえに
私を最も苦しめる痛みも死んでくれるなら
おお、そのときには、いまいちどの夜明けが
空にほのかな光をもたらす日が来るかもしれない
いまいちどの夏が私の頬を金に染め
私の魂にいまいちどの愛が
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