第四部

「聞こえなかったか? 貴様はこれより我が弟子だ」


「いや、聞こえたけど。なんで俺が魔女にならなきゃいけないわけ?」


「愚問だな。利用価値がなければ、我が貴様のような凡人を救うものか。貴様には魔女としての素質がある。我と共に野望を叶えようぞ」


「……ちなみに、野望とは?」


「この世界を滅亡させる」


「……嫌って言ったら?」


「ふん、それなら貴様の利用価値はなくなるな。『反転』で元の肉塊に戻すまでよ」


「拒否権はないわけですか……」


 俺が魔女……この世界を滅亡させる……以前の俺なら自信がなくて嫌がっていただろうが、今の俺は違う。

 心身共に奥底から力がみなぎってくるような、破壊衝動に駆られかけているような、そんな不思議な気分だ。


「どうだ、やる気になったか?」


 にやりと口角を上げるソルシエル。


 俺は諦め半分、期待半分の溜め息を吐いた。


 まあ、こうなってしまった以上、どうせ目的も何もない。

 拾ってもらったこの命、ソルシエルに捧げるのも悪くないのかもしれない。


「わかったよ、魔女になればいいんだろ。魔女になって世界を滅亡させたらいいんだろ。やってやろうじゃん」


「はははははっ! よき心意気だ、ナナシよ」


「ナナシ?」


「貴様に名はいらぬ。ナナシで上等だろう?」


「はぁ……もうなんでもいいや、ソルシエル……さん?」


「我のことはお師匠様とでも呼べ。ソルシエルは名にあらず。先代から受け継いだ肩書きに過ぎぬ」


「わかりましたよ、お師匠様。それで? まずは何をすればいい?」


 顎に指を当ててしばし思案するソルシエル。


 やがて踵を返し、両開きの扉に手をかけた。


「ついてこい」

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