9

 朝から激しい雨が降っていた。

空の上には巨大なたらいがあって、それを神様が任意でひっくり返しているのだ、と言われたらマックドアは信じたに違いない。それほどの雨だった。

 雨は昨日の乾いた血を地表からはがし、急勾配の坂道を通って排水溝へと流れていった。

「わたし、明日落ちる日だわ」と、彼女はいった。

「嫌かい?」

「うれしくはないわ」と、彼女はいった。「でも、恐くもないのよねェ」

「慣れ?」

「そうねェ、どうせ落ちてる時に気を失うんだから」

「よかった」

「初めての時は上手く気を失う方法が分からなかったのよねェ・・・・・・だから、とっても痛かったわ」

 彼女はさも恐ろしそうに言った。

そして、「性交と一緒ね」と付け加えた。

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ヒュー、どーん 青豆 @Aomame1Q84

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