屋上に立って、いつの日か僕らはお互いを求めていく

ホラーを題材にしたミステリー。
落ちもある。怖さはないけど、不思議さに満ちている。

書き出しが良かった。

アスファルトがかすかに熱を帯びるほど暑い九月初旬。
稼働している室外機の排熱で、周辺はかなり暑いはず。
「彼女は室外機の上に腰を降ろした」ともあり、座るのは難しいのではと考えてしまう。
だから、尾刈と名乗った彼女は、人間なのかどうか怪しい。
屋上自体が、非日常空間なのかもしれない。
不思議体験を小説にしたあとがきには、黄泉比良坂から逃げ帰ることになったイザナギに似ているが全てが逆なので、便宜上、逆黄泉国として語られているところがある。
その話と対になっていて、屋上が逆黄泉国、彼女は蛇なのだろう。
「黄泉国とあべこべに住処を創ったのは、黄泉国に心底嫌気が差していたからだろうね」と書いているので、同じ理由から尾刈は屋上に「屋上出張文芸部」を作ったと邪推する。
彼女が人だった場合、平たくいえば「集団に属していない事を実感させられるのは息が詰まるほど苦しい」と感じての行動かもしれない。

果たして、片山は志望校に選ぶのかしらん。