第3話 彼氏認定
あれからおおよそ6年が経った。その間、テティス様はずっといじめが怖かったのか大抵の場合は俺と行動することを心がけ、いじめのことを先生に相談したのか6年間俺とテティス様は同じクラスの上、あの小僧どもと同じクラスになることはなかった。無論、3年生からカレセに進学するつもりの生徒としないつもりの生徒でクラスが分けられたのもあるだろうが。
そして今日、ついに卒業式を終えた。試験にもトップクラスで通過したし、春休みが開ければカレセでの寮生活が始まる。
卒業式を終え、解散になった後のこと。俺はテティス様の家の前で待つことになっていた。
「待たせちゃった?お父さん、心の準備がなかなかできなかったみたいで」
「そうか。ん?お父さんの?」
「今日は、正式にお父さんにパルちゃんを紹介したかったから…」
「えっと、つまり…?」
「とりあえず上がってよ。話はそれから」
俺は状況が理解できなかった。テティス様は父上に紹介して一体どうしようというのか。それで、テティス様の父上に「娘を友達にくれてやるつもりはない!!」って一喝されるのだろうか。
「お、お邪魔します」
「ほら、そこの席に座って」
俺は案内されるがままにリビングの椅子に座った。正面にはテティス様の父上がいて、少々険しい顔になっていた。
「お父さん、この
「ご紹介に預かりました、我は星川パルスです。父上?よろしくお願いします。ん?彼氏?」
違和感を持ったのは俺だけか?
「娘を嫁にくれてやるつもりはない。ん?彼氏?君、どう見ても女の子じゃないか?」
「ああ、やっと気づきました?いえ、その、我は彼氏ではないんですけど、まあ、親友以上恋人未満的、な感じですかね。いや、我も最初彼氏だなんて聞いた時は少し驚きましたが」
「まったく、小学生のクセにどんな畜生小僧に引っ掛けられたのかと冷や冷やしていたのが無駄だったみたいだなぁ。俺もテティスからは彼氏が来ると聞いていたけど、ただの友達だったのかぁ。はっはっは」
俺は義父上がフレンドリーな感じの人で安心した。が、テティス様は何かが気に障ったらしく、勢いよく立ち上がった。
「お父さん!!パルちゃんをただの友達なんて言わないで!パルちゃんは入学式の日、見も知りもしなかった私を助けてくれたの!しかも、ルナーン様が存在するって一緒に言ってくれてるの。私が
「そ、それはごめんな。まあ、テティスにもいい友達ができたってことだな。パルスちゃんだったか?これからも娘を…。ってあれ!?」
俺は、テティス様が想いを言い切ってすぐに気絶していたらしい。まるで顔を殴られて気絶したかのように、白目を剥いて鼻から大量出血させながら伏せていたらしい。
*
俺は夢を見ている。夢というよりは、回想。それはおよそ2年前のこと。5年生のことだったか。カレセを学校見学に行った
試合は、ある程度のHPゲージが用意されていて、相手のHPゲージを0にした方の勝ちというルールで、それぞれの得物を模したレプリカで切り合う(切れないから厳密に言うと叩くだが)。
相手選手の攻撃でアテルナさんの左腕の骨が粉砕されたか何だかで、アテルナさんは苦しんでいた。テティス様はそこに飛び出していった。
「アテルナ様、アテルナ様!!大丈夫!?無理すると死んじゃうよ」
「私は、大丈夫、だ。あの女神の、子孫となれば、この、程度で倒れるわけには、いかない」
相手選手は興奮状態で、正常な人間の表情ではなかった。
「おい、小娘。殺されてェか?乱入者は殺していいルールだもんなァ!!」
その腕に振り上げられた得物を、即座に飛び出した俺は左手の甲で受け止めた。痛かったのは覚えてる。今左手の甲にある星の形に似た痣のような黒い模様はその時にできた。
「ほう、アタイの攻撃を左手だけで受け止めるとは。しかも相当痛いはずなのに発狂しない。なかなかだねェ。しかし、こっから引き下がる方法はない。お前らはアタイに殺される運命なのよ!!…あれ?」
俺はあのメスゴリラ剣士が無駄口を叩いている間にテティス様を連れて即座に観客席に戻っていた。
「うぅっ…。怖かったよお…」
「大丈夫、我が守るから。テティス様は一生我の傍にいればいいです」
「パルちゃん…」
ああ、あんなセリフ吐いたこともあったか。だから彼氏認定なのか?それとも、俺の中身が男だってバレてる!?
…今はどっちでもいいか。俺は改めて、ルナーン様に感謝したいと思った。
続く
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