心配無用――テンプレートを気にするな

 ……独創性がない…………。


 流行に乗って、異世界転生ものを書いた。文章に凝っているわけではないが、きっと面白いはず。


 ……独創性がない…………。


 いかにも王道の小説だが、だからこそ万人受けするはず。


 ……独創性がない…………。


 本に載っていた方法で、小説のプロットを完成させた。いいものが出来た。これなら誰もが読んでくれそうだ。


 独創性が……ない!


 流行に乗っているから、王道だから、プロットを書いているから……だから邪道だ!


――

 たまに、独創性主義者がいる。「プロットを書いているから、独創性がない」と主張するのは極端な例だが、一定数の人がそう思っているのだ(あるいは考えている)。


 独創性はあるに越したことない。だが、独創性以上に大切なことがあるのではないか。


 すなわち、小説を書き続けることだ。


 僕の、座右の銘は、

「淡々と小説を書き続けること」


 淡々かどうかは置いても、小説を書き続ける力がなければ、小説家にはなれない。


 新人賞を獲ったから、小説家になるわけではない。渾身の一作が、世間に評価されたところで、それだから小説家だとは限らない。


 小説を書き続けてこそ、小説家になるのだ。


 そもそも、小説には普通、テンプレートが存在する。どこか一箇所が独創的に思えても、それは、既存のアイデア同士を組み合わせているのが通常だ。


「その組み合わせ方を、独創的と言っているのだ!」


 こういう反論に対して、さらに反駁はんばくをするつもりはない。というよりは、上手いこと反駁も出来なければ、する必要性も感じない。


 だが、隠れたテンプレートは存在するものだ。見えないだけで、分析していくと、ある程度何かしらのテンプレートに基づいていることが分かる。


 けして、テンプレートを恐れてはならない。もし、退屈な作品だと感じるのであれば、何かしらのひねりを加えよう。


 思うに、最も恐ろしいことは、小説を書けなくなることなのだ。

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