第7話 小説が書けないならば

 小説を書きたい、という人は多い。一部では作家に本気でなりたい、と思う人もいる。


 しかし、(厳しいことを言うが)現実はどうだろうか。


 自作品に満足出来ない人、小説の技法を上手く使えない人、小説の構想自体まったく浮かばない人。


 そして一部の、理想を目指して小説が書ける人――だが、どのタイプの人間でも、悩みなくして小説を書けない。悩みがなく小説を執筆する人など、はたしているのだろうか。


 小説の書き方、という本はよく聞く。しかし、だからといって小説が書けるかといえば、疑問である。


 まれに、本をいくら読んでも好きになれない、という人がいる。だから、本を好きになるために、『本の魅力を伝える本』を読んでも、そういったある意味変態的な読書家にとって、おそらくは何の意味もなさないだろう。

 もし、その本で、本当に好きになれたのであれば、単に自分に合った本を見つけていないだけか、あるいは作者がよほどの表現力を持ち合わせているか、どちらかであろう。


 しかし大事なのは、そういった過程なのだ。結果として、今の例では、たしかに本を好きになれなかったかもしれない。だが、本を読んだというのは事実であり、経験値が上がっていったのもまた事実である。


 小説家の多くは、小説が好きだ。第五話でも触れた通り、小説を読むという行為は、凄いの基準を作り出す。また、そういった凄い作品を自分で生み出したい、と思う――それによって、創作意欲が刺激され、実際に悩みながらでも小説が書けるのではないか。


 だから、自作品ばかりを読んでいてはもったいない。


 残念ながら、小説を書くにはまったく向かない人もいる。しかし、どれだけ時間がかかろうとも一本の自信作を生み出すことが出来たならば、それはもう立派な小説家ではなかろうか。

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