第6話 理想と現実

 ――有名になりたいなら、自身の読者に布教してもらえばいい。


 その認識は間違っていない。が、読者がいない、あるいは信者がいない、となると「それができたら苦労しない」と誰しもが思うだろう。


 作家に筆力がついたとしよう。キャッチコピーも興味をそそられるものだ。万全の状態でいざ刊行(あるいはネットに投稿)となったとき、度々、作者と読者が求める理想の感覚は、ズレてしまうことがある。


 何を面白いとするか、この感覚は当然ながら人それぞれである。


 だからといって、なにも絶望することはないように思う。正直、ここまでで、どれだけの物書きが励まされたかは分からない。そんなこと知っている、と思う人もいれば、参考になったというふうに、応援をいただくこともある。これが感覚の違い。もし第一話からお読みいただいた方で、この創作論をつまらない、と感じても、他の人のほうが参考になる、と感じても自由なのだ。


 ただし、自分の理想を追求するなら、覚悟をしなければならない。評価がされない、という覚悟を。


「絶望するなって言ったのに、矛盾しているぞ!」


 いや、むしろ僕は自作品に自信を持て、と言っているのだ。しっかり第一話からお読みになった方ならば、それがどういうことか分かるだろう。簡単に言えば、作者自身をもうっとりさせる作品を書け、と言っているのだ。


 僕は、小説の書き方講座をおこなっているというよりも、執筆に当たっての心構えを示している、と自分では思っている。


 この創作論が役に立たないだとか、時間がムダだと思う人は、すぐにでもページを閉じたほうがいい。なにしろ、時間は有限なのだ。


 しかし、そう言い切れるほどには、僕もこの創作論に自信を持っている、ということかもしれない。

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