第3話 努力と運

 さて、売れない作家が、亡くなってから知名度が上がるというのは、よくある話だ。でも、「時代が追いつかなかったからだ」と説明されても、時代というのは何だ? と訊かれて答えられない、もしくは世間一般としてはこういう意味だろう、と自分なりに回答出来ない人は案外多いのではないか。


 小説家ラヴクラフトは、一部の熱狂的信者がいたからこそ、小説を書いていられた。しかし、とてもじゃないが時代云々うんぬんでは見過ごせないものがある。

 なぜなら、現代でもラヴクラフトは莫大なアンチを抱えており、いうなれば太宰治のように、信者とアンチで対立を深めているからである。


 時代というのは、ただ単に、自作品が有名かどうかに尽きるのではないか。ラヴクラフトの信者にしろ、結局はたまたま大物を掘り当てただけなのだ。


 現代では、そうした信者が布教したからこそ、ラヴクラフトが有名になったと思う。


 また、ラヴクラフトは、自身の信者からファンレターのようなものが来ると、必ずといっていいほど返事を書いたそうだ(それもかなりの文字数で)。

 それもあってか、信者はますます彼を崇拝するようになったのである。


 ここから、個人(=ラヴクラフト)の努力と大勢(=信者)の努力とでは、有名になるという意味で、大勢の努力のほうが割合を多く占めていることがわかる。とはいえ、個人の努力も必要不可欠で、しごく当たり前のことながら、売れない作家はそもそも活躍する場が悪いのである。ラヴクラフトも気の毒なことに、読んだらすぐに捨てられるような、安い雑誌で活躍していたのだった。


 ――では、たとえばカクヨムのようなweb投稿サイトはどうだろうか。同じ場所で、驚くほど小説どうしに格差があるではないか。

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