第2話
艦長席でふんぞり返っているミリアを追及するように睨み続けていると、半泣きになって慌てた様子でポケットからスペースフォンを取り出した。
「スペースネット掲示板にわらわたちをバカにするコメントがあったのじゃ、だからわらわはそのコメントした奴に文句を言ってやった!!」
ミリアはどうだ偉いだろと言わんばかりにつるぺたな胸を張ってチラチラとこちらの顔色を伺ってくる。
事の成り行きは概ね理解できた。
九分九厘間違ってはいないのだろうが、一応その先の流れも聞いておく。
「それで?」
「うむ。わらわが文句を言ったらあいつ……いや、あいつらは寄ってたかってわらわのことをバカにしはじめたのじゃ! そこらの有象無象如きがデストロイヤー軍の総帥たるわらわを侮辱するなど万死に値する。だから調子に乗った者共を粛清してやろうとデストロイヤー軍の現在位置を教えてやったのじゃ!」
やはり俺が想像した通りの展開だった。
ミリアのような奴はネット民からすれば最高の玩具になる。
ミリアを煽って楽しむ輩が一人二人と増え続け、最終的にはネット掲示板がお祭り状態になっただろうことは容易に想像できる。
だが、ネットの掲示板に集まっていた者と今回この宙域にやってきた者は全くの別口だろう。
宇宙を闊歩する荒くれ者集団は星賊と呼ばれ、星賊に対しての対抗勢力として宇宙の法と秩序を守る銀河連合という組織も存在する。
星賊はそれぞれ縄張りを持っており、集団の規模や戦力によってその広さは様々だ。
そのため星賊の間でも日々勢力争いの戦争が宇宙の各地で行われている。
かくいう俺たちデストロイヤー軍は星賊としての決まった縄張りは持たないのだが、その名は星賊、銀河連合のみならず宇宙全土に知れ渡っていた。
不可侵存在アンタッチャブルとして銀河連合からは莫大なバウンティーが懸けられ、星賊の間では最凶最悪の存在として恐れられている。
『数十万にも及ぶ軍勢を僅か数人で殲滅した』
『星喰らいを撃退した』
『銀河連合を壊滅寸前まで追い詰めた』
俺たちの逸話の中でも有名なのはこの三つ。そのどれもが一般的に見れば到底信じることができないほど常識を逸脱した内容だ。
新興勢力の星賊の間では俺たちの強さを疑う連中が後を絶たず、時々ちょっかいをかけてくる輩が存在する。
今回現れた星賊も恐らく俺たちのことを良く思っていない新興星賊の一つで、デストロイヤー軍の足取りを調べて虎視眈々と名を上げるチャンスを窺っていたのだろう。
そんな矢先にミリアのリーク情報がネットに拡散され、その信憑性が高いと判断して戦力を集めた。
こんなところだろうと思案していると、俺たちのやり取りを見守っていたデストロイヤー軍の一人、ハイル・ミラーが唐突に口を挟んできた。
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