第21話 蜂と蜘蛛(2)

3人は外へ出ると、一先ず駅に向かうことにした

駅でラビと一旦別れる予定であった。


だが、駅に向かう途中でアクシデントがあった。

5人ほどの警官達に取り囲まれたのだ。


「何なんですか一体!?」


「レオル、抵抗するな、用があるのは

そちらの黒ずくめの女だ。」


「この街にとんでもない不審者がいると

朝一で通報があったんだ。」


そう言うと警官隊はラビを取り押さえようと

した。


「待って、この人は不審者なんかじゃない!

ソージの街を救った英雄なんだぞ!」


レオルがそう叫んでも警官隊は動きを止めなかった、ラビは警官達の動きをヒョイヒョイと

避けていたが、その内にハッとした。


『もしや……!』


この一連の動きの意味を理解したラビは

サッと動きを変え、蹴りや拳にて

警官達の動きを止めていった。


「!ラビ待って、暴力はダメだ…!」


ハッとしてレオルはラビを止めようとしたが

ラビの動きは一瞬で止める間もなかった。


「ラビ、この動きはヤバい、大問題になる……」


レオルはラビの一瞬の動きに改めてラビが

本当に『死神』なんだと感心してしまう一方で

起きてしまった事態への対応を考えねばならなかった。


「やられた。」


ラビは苦々しげにそう言った。


「えっ?」


レオルは何が起こったのか分かっていなかった。


「やつの狙いはジルだった。

この私相手に人質を取るとは……」


警官との揉みくちゃの間にジルが連れ去られて

いたのだった。


「えっ、ジル?攫われたのか?そんな…!」


「人質を取るということは、奴から見て

あの子はそんなに私にとって価値があるように

見えたと言うことか……」


「仲良さそうだったからな。」


「仲が…いい……?」


ラビは何だそれはと言わんばかりであった。

だが思案している暇は無い。


「この場の後始末を任せる。」


「追うのか!?でもどうやって……!」


ラビは少し先落ちていたものを拾う。


「見ろ、蜘蛛の糸だ。あいつは私を誘っている。」


「それじゃあ罠じゃないか!」


「そうだ、その警官達も最初から私を『女』だと

決めつけていた。私を初見で女と決め付ける者は

少ない。最初から仕組んでいたのさ。」


実際レオルもラビが女であろうと何となく

思っていたが、確認したわけでも確定して

いたわけでもなかった。


「通常は価値のある間は人質に傷を付けないが

アレはまともではない。

あの子に価値があるかは後で考えよう。」


そう言ってラビはヒラリとその場から

いなくなった。


「マジかよ……」


ラビが現れてからの一連の出来事は

レオルにとってはどれも信じられないことの

連続であった。


「うう、どういう事だ…何があった…?」


漸く1人の警官が意識を取り戻した。


「ササー巡査長……」


レオルには何の言い訳も思い浮かばなかった。

仕方なくこれまでに起こったことを

順を追って丁寧に説明することに決めたのだった。


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