第14話 制圧

塀の爆破が行われた瞬間、ラビは塀から

倉庫の屋根に飛び移った。


そして連鎖的に起こる爆発音の中で

屋根の近くにある明り取り用の窓を割った。


倉庫の中にいたまだ寝ていた犯行グループ8人は

爆発音で飛び起き驚いた。


「な、何だ!?何が起こった!?」


「外で爆発音が…!」


「攻めてきたのかよ!昨日の銃撃戦で勝ったから

もう向こうは降伏したって言ってたじゃねえか!」


「うるせえ!とにかく出て見てこい!」


口々に揉めながら彼らも動きだす。

その騒ぎの中で窓が割られた事に気付く者は

いなかった。


外は夜が明けたばかりで倉庫の中はまだ暗かった。


5人が外に出ると、残った3人は倉庫の扉の

左右から外の様子を伺いつつ応戦をする体制を

取った。


やがて激しい銃撃の音が鳴り響く。


「ぐうっ!」「ああくそっ!」っと

仲間がやられたような声がしている。


倉庫内に残ったリーダーらしき男は

苦々しげに苛ついている。


「くそっ!外はどうなっている!?」


その時、中に残った1人が震えて泣き出した。


「う、う、い、嫌だ死にたくない…!

俺は元々こんな事したくなかったのにー!」


叫んだ男は側にいた男に持っていた銃で

そのまま殴りかかった。


そしてそのまま2人は揉みくちゃになった。

とても錯乱しているようである。


「おい止めろよてめえら!」


扉の反対側で怒鳴ったリーダーの男は


『くそ面倒くせえ』


と言わんばかりに、錯乱した男に銃を向けた。


銃を引こうとしたその刹那、

要らなくなった物が積み上げられている

その積み荷の陰から黒い影が飛び出した。


リーダーの男の背後に飛び出したラビは

そのままの勢いで男の頭を警棒で強く打ちのめす。


声を出す間もなく男は崩れ落ちた。


その男の銃を拾うように奪うと、銃口を2人に

向け、


「抵抗を止めるか、撃たれるか選べ。」


と言った。


こうして夜明けと共に始まった救出作戦は、

数時間にも満たない時間で成功して終わった

のだった。



人質2人は衰弱していたが無事であり、

行動班の怪我人は0であった。


見る人によっては呆気なかった。

簡単にやってのけたと思う者もいるかもしれない。


果たしてそうなのだろうか。


行動班の者達は作戦の成功を心から嬉しく

誇らしく思いながらも、なぜだか抱く恐ろしさに 動揺を隠せなかった。


『絶対に無理かと思われた人質の救出が

こんなに簡単に完遂できた……』


『それもたった一人の助言で……』


それは何を意味するのか、

考えても考えてもさっぱり答えが見つからない

でいた。


彼らの心情とは別にソージの市民達は

お祭り騒ぎのように喜んだ。


皆は喜び警官達を褒め称えた。


犯行グループの者達は重症者を含めて全員

馬車や車で連行された。

彼らは一旦ソージの刑務所に置かれた後

ワシアで裁きを受けることとなる。


制圧の連絡を受けてワシアから応援や物資が届き

貨物船の往来も再開された。


客船は基本一隻のみだったので、

船長の回復を待って再開されるようだ。




戻ってきた行動班は市民の歓待を受けた後、

それぞれ事後処理に追われた。


ラビは警官の詰所でジルを待っていた。


「船は取り急ぎ明日の午後に出航再開

されるみたいだ。」


レオルがそう報せにきた。


「船は1時間くらいで着く、

それからーーー

どうしても貴方に聞きたいことがあって……

明日の朝に少し時間がほしいんだけど、

かまわないだろうか?」


「……………」


ラビは何とも答えなかった。


「嫌かもしれないけれど、どうしても頼む!

明日の朝、君達が泊まる宿を訪ねるよ。」


そんなやり取りをしている中、

マークが詰所に入ってきた。


「ここにいたのか、ラビ……さん、

どうしてもあんたに頼みがあるんだ!」


マークはとても焦って困っているようだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る