第11話 救出作戦(3)

ブルーノは今朝の救出作戦の参加者でもあった。


もう1人の無事だった警官は怪我人に

付き添っている。


朝の交戦では一方的に攻撃され

成すすべもなかったようだ。


その為ブルーノはもう一度救出活動に出るのが

怖かった。


ラビはそのブルーノや他の者から

立てこもりの場所、地形、建物の構造などを

詳しく聞きだした。


この国が内戦状態になってから使われなくなった

街の外れにある大きめの穀物の貯蔵用の倉庫に

12名が2人を人質に取り立て籠もっている。


辺りは整地されていて四方はどこも見晴らしが

良い。背の高い草も無いようだ。


倉庫の周りは馬車や車などを置ける広めの

スペースが前にありその周りを盗みなどが

入らないように、高い塀が囲っていた。


街の中央から続いている道の先に、

塀の唯一の出入口となる大きな扉がある。


塀の扉は今は固く閉ざされており、

その扉の向こう側が貯蔵用倉庫の扉へと直結

している。

倉庫の出入口扉も一つのみ。


窓は上方高くに数個設置されているが、

それを経由しての外からの侵入は困難である。


扉側の塀の上に

数名の見張りが銃を構えているようであった。




ラビは、壁の厚さ、素材、こちら側の武器の数、

火薬の所有量を確認し、侵入方法から

その後の行動までの指示を始めようとしたが、

ふと思い直した。


「その前に確認したいことがある。

立て籠もり犯は全て殺してかまわないかな?」


皆顔を強張らせ、緊張した空気が走った。


少ししてマークが口を開く、


「いや、それは待ってくれ……

知り合いの息子がそいつらの中にいるんだ。」


「俺の昔の友人も……」


別の新米警官も続いて言った。


「元々外から街に強盗目的で来たのは6人で

残りの6人はこの街で犯罪に誘われて

乗ってしまったんだ。」


「他所より穏やかに見えても、不景気になった

り、駄目になった商売もたくさんある。」


「失業したり、金に困ったり、

理由は色々あって……」


「理由があっての行為なら殺すべきではないと?」


「いや、甘いことを言っているのは分かっている、けれど昔から知ってるやつを簡単には殺せない……」


「何とか命を取らずに、説得や厚生の機会が

ほしい……」


マークはラビを信頼していないし、

むしろ嫌っていたが、

それでも苦しそうにそう頼んだ。


「ふうん……」


作戦は警官達の詰所で行われていた。


全員で囲んでいる机の上の貯蔵庫の簡易図を

ラビは眺めた。


『殲滅なら私一人で充分なんだがな……』


そう思いながら、


「そうなると少々手の込んだ動きが必要と

なるが、かまわないのだね?」


と確認をとった。


警官達はみな頷いた。


誰より集団行動の苦手なラビであったが、

特殊施設で学んだことを順々に思い出しながら

ラビは作戦を述べていった。


一通り伝えた後、ラビは付け加えた。


「最後に、一つだけ先に伝えておく、私は……」


「私を殺しにきた者を生かしておけるか

分からない。」

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