第4話 二人の行く先で

ラビとジルが出会った町では日に日に治安が

悪化していて、まだまともだった者達が

次々に町から逃げ出している状態であった。


終わらぬ内戦状態のせいで

治安も物流もまともに機能しなくなり

暴れまわる自警団や他所を追い出された犯罪者

町の自治権を狙う反抗勢力などが

常に争っていた。


その為、もうこの町ではまともに食料調達も

できないでいた。


この町の東の街道を二日ほど歩けばワシアへ

たどり着けるはずであるが、

その街道へ続く道沿いに数十人からなる

反抗勢力が拠点を張っていた。


どうやら道を通る者達から金品を奪っている

ようで、ほとんど誰も道を通らなくなって

しまっていた。


「ここ、通れるかな?」


少し離れた所から拠点の様子を伺ったラビと

ジルは、食料も多くなく、先に進むにはそこを

通っていくしかなかった。


「いくつか時間の経った死体がある、

何ごともなく通ることは難しいだろう。」


ジルはゾッとして足を竦めた。


「あそこにいるのは16名ほどだな、問題ない。

じきに夜になる。少し待っていろ。」


ラビはそうそっと言った。

ジルにはその意味がまるで飲み込めなかった。


そして夜までラビは押し黙ってしまった。

ジルも一緒にじっと黙っているしかなかった。


やがて夜になると、


「少しの間ここで待っているんだ。」


「大丈夫?どうするの?

アイツらが寝てる間に行くの?私は?」


不安からジルは矢継ぎ早に質問をした。


「道を通れるようにしてくるだけだ、

待っていろ。」


「でも、もしあなたが死んだら私は……」


不安から泣いてしまうジルであったが


「私は任務を完遂する。待っていろ。」


ラビはそう言い残し、その場を去った。



獲物を逃す気の無い荒くれ者達は、

夜も道を見張っていた。


武力に自身があるのだろう、待ち伏せなどせず

火を焚き、自分たちの存在を見せつけていた。


「最近誰もここを通らなくなって

獲物が減ってつまんねーよなー。」


「俺らも出稼ぎ組の方に行けばよかったぜ

こんな湿気たところで見張りなんて

本当だりいな。」


夜の見張りを任されている男達は

気怠そうに文句をたれていた。


見張りは五人だった。


「早く武器と人を集めて中央の方に行きてえな。

こんな地方にいても目ぼしい物も手に入らねえ

早くいい思いをしていた貴族や偉いサン達から

奪えるだけ奪いたいぜー。」


気性の荒い荒くれ者達であったが、

目的のために結束を固めていた。


そんな彼らの目と鼻の先に黒い影が現れた。


男達が気付く前にラビは声を掛けた。


「やあ君達。」


全く気配無く現れた影に、慌てて攻撃体制をとる

荒くれ者達。


「何だテメエ!」


驚いたことを隠すように怒鳴り散らした。


「気にすんな撃ち殺せ!」


男達は銃器を構えて撃ってきた。


ラビはヒラリと躱すように暗闇に隠れた。


『大人しく通す気があるか尋ねるなど

無駄であったか。』


ラビは思った。


一人であれば声など掛けず

平然と通っていくのだが、

人を連れてとなるといまいち勝手が

分からないでいたのだった。


銃弾が闇を撃つ。


「おい、早く殺れよ、どこに行ったんだアイツは!」


一人が苛立ちながら一際大きく声を上げた。


瞬間。


その男の横から大きくこめかみに蹴りが入り、

男が吹っ飛んだ。


鉄が仕込まれた重めのそのブーツは

一蹴りで人を殺すこともできた。




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