第33話

過激派との抗争が終結しましたが、世界はまだ、平和とは程遠い状態だ。

アルグは引き続き、平和の為に対話の場所を設けたり、紛争地域での支援作業をしている。時々、襲ってきたテロリスト相手に戦闘をするが、非殺傷を心がけている。

過激派の代表、ヴィラージュが捕まった事により、ルドベキアは解体。組員の大半はヴィラージュの指示により、穏健派の一部となっている。

過激派の所有していたファイルーテオンは穏健派が回収、アルグの移動基地となる。そして、フィオレンティーナを失った私は建造中の機体、アイレミスティーナを受領する事が決定した。

ただ、急遽私が乗ることになったので、設計の変更により、建造が大幅に遅れてるとの事。そして、フィオレンティーナがいなくなったのが影響しているのか、瑞穂が夢の中でも現れなった。

「何だか半身を失った感じね」

あれから2年たった今も、私の心には穴が空いたような感じの状態だ。

「あ、お姉さまここにいましたか」

「うん、海を見てると心が落ち着くの。何だか瑞穂が私を呼んでる気がするから」

「そうでしたか、そう言えばアヤさんの機体、シェミリールミューナが完成したようですよ。見に行きましょう!」

「え、もう出来たの?」

「何でも突貫工事らしいです。元々方向性は決まってましたし、材料もあるし、コックピットと駆動系は既存のパーツを使ってるようなので早いみたいです」

「そ、そうなのね」

それでも、2年とちょっとで完成させるアルグ驚異の技術力だ。

私は特にやることもないので雛子と一緒に建造ハンガーへ向かう。中に入るとそこにはフィオレンティーナに似た外見に、アルテミューナの正反対な色、黒と紫をメインに銀色の装飾、そして、頭部は一部が放熱の為、金色で赤いツインアイをしている。

「好きな色をって、言ったけど、何だか悪役っぽい色合いね」

「それ言っちゃいます?」

「まずかったかな?」

「私は聞かなかった事にしますね。一応、理由はありまして、夜間等で目立ちにくい色だそうです」

シェミリールミューナの周囲を回り、機体をよく見る。

「資料によりますと、基本的にはフィオと同じですが、バックパックはアルテのシリウスをベースに改良をしているそうです。高速偵察ユニット、アルタイル。大型のレドームとミサイルコンテナ、が付いているようです。アヤさんの戦闘スタイルに合わせて、遠距離重視の武装を装備しています」

「シリウスとアルタイル、それにこのカラーリング、狙ってるのかしら?」

「なにをですか?」

「ううん、何でもない」

「後、お姉さまにはアイレミスティーナが完成するまで、レックスティーナを使ってもらうとの事です」

「レックスティーナかぁ、私よりボーセルさんにあげたほうが戦果がでそう」

私はシェミリールティーナの隣に立っているレックスティーナを見る。レックスティーナはまだ未完成で、左腕がない状態だ。上半身こそフィオレンティーナの面影があるが、下半身は完全に別設計であり、二足歩行状態と、レールガンを撃つ為に、脚部を折り畳み、前屈みにして重心を下げた状態の二形態があるらしい。脚部を折り畳んでも格闘出来るのはいいけど、頭部にまで、兵装を付けるのはどうかと思う。

「噛み付きを機動兵器でやるなんて完全に趣味の世界よね」

何故、こんなことになったかと言うと、アブレイズの悪乗りをシャウラが理解し、意気投合して生まれた結果だそうだ。

「でも、アニメのロボットでは噛みつく機体もいますよ」

「そりゃ、アニメは接近戦した方が画が映えるからね」

「確かにそうですけど…」

「あ、ヴァンテージさん、雛子さん、此方にいましたか」

調整をしていたアヤがやってきました。

「アヤ、調整は終わったの?」

「えぇ、実際に動かしてみないと分かりませんが、ほぼ終わってます。今から実際に動かしますので一緒に乗りますか?」

「え?乗れるの?」

「はい、複座になっています」

フィオレンティーナは何故か複座だったが、シェミリールミューナはアヤ曰く、偵察も兼ねているので複座にしたようだ。

「じゃあ、乗る!」

キャットウォークを登り、シェミリールミューナの胸部にたどり着く。そして、アヤは携帯端末を取り出し、操作すると、ハッチが開く。

「わぁ、最先端だね」

「ヴァンテージさんも携帯端末を持てばアイレミスティーナも同じように出来ますよ」

「う、うん、考えとくね」

ハッチが開くと入ろうとする私をアヤが止める。

「ヴァンテージさん、シェミリールミューナはメインパイロットが後ろですので」

「へぇ、フィオとは違うんだ」

「はい、観測者が前で、操縦士が後ろです」

「なるほど、これならあの娘達にぴったりね」

「あの娘達?」

「私の可愛い期待の新人ちゃん達」

「ヴァンテージさんが期待する方なら信頼出来ますね。幸い、予備パーツが沢山ありますので、すぐに建造できますよ」

「そうね、あの娘、機体失っちゃったし丁度いいかも」

アヤが後ろに座り、私は前に座る。中は一つの湾曲したモニターがあり、それを二人で共用するようだ。ハッチが閉まる瞬間、雛子が手を振ってくれましたので私も振り返えす。そして、アヤが電源を入れるとモニターが灯もる。


"XJL-14/1 SHEMIREELMYUNA"


【こんにちは!】

突如、コンソールに銀髪でブレザーを着た少女がホログラムで現れる。

「アヤ、この娘は?」

「一人で乗る場合、狙撃状態では注意が疎かになります。なので、各種センサーを駆使し、機体の制御やアシスト、回避運動をしてくれるAIです。名前はシェミ」

アヤの説明によると、フィオレンティーナに宿っていた瑞穂を参考にシャウラが作ったAIらしい。機体を制御するOSとは別にAI専用のOS、Adattabile Network Intelligent Management Artificiale Sistema 通称ANIMAシステムと言う、実験的な機能をつけてるらしい。AIとは言え、頭文字を合わせると魂と言う、一人の人間して扱うシャウラの心意気には感心しますが、専門用語が多過ぎて理解が追い付かないので適当に相づちと質問をしてくか。

「それで、シェミの外見はアヤの好み?」

「…そ、そうです……ヴァンテージさんと瑞穂さんを参考にしました…」

「え?何か言った?」

「何でもありません!」

誰かに似ているような気がしましたが、思い出せない。私が独りで考えてる内にアヤは素早くセットアップを完了させると、シェミリールミューナは台車から降りて、格納庫を出て、滑走路へと向かっている。

「滑走路から出るの?」

「跳躍と短時間の飛行は出来ますが、変形して飛ぶには滑走路使った方が安全です。その為、脚部に離着陸用のタイヤがあります。空中で変形して急ブレーキをし、方向転換する姉さんが化け物なんです」

「そ、そうなのね…。滑走路が無い場合は?」

「三段跳び…ですかね?」

私は三段跳びをするシェミリールミューナを想像し、笑いをこらえました。

[インテ……失礼しました。ヴァンキッシュさん、離陸許可出ました]

「ありがとう、フェルテさん。では、行きます!」

シェミリールミューナが加速していき、離陸して、ある程度の高度になったら変形しました。

「今、巡航形態になりました」

「振動はあんまりないんだね」

海上に出ると白い機体、アルテミューナが追い越いこしていく。

[アヤ!受領おめでとう!早速だけど、アヤの実力、見せてもらうね!]

「え!ちょっと!姉さん!」

「リーザさん、人の話聞かないからね。私の事はいいから、頑張って」

「はい!」

アヤは追いかけるが如く、最大推進状態リヒートにし、アルテミューナが飛んでいった方向に行く。

「私もリーザさんには散々やられてるので少しはやりかえそっかな。何かあるかな」

私はコンソールを操作します。偵察機としても使えるので、センサー類が豊富だ。それらを駆使し、アルテミューナを探す。そしてそれらしき熱源を見つけると、ズームして目視で確認する。

「アルテミューナは…いた!アヤ!3時方向!」

「了解です!」

するとアヤは左へ旋回します。

「え?どこ行くの?」

「戦闘機は前にしか進めません。姉さんが3時方向、つまり、さっき追い越して右に旋回したと言う事は右に旋回して追いかけた所で追い付けません。そこで左へ旋回すれば正面に来るはずです。仮にに、正面に来なくても此方は遠距離機体ですので遠くから狙撃します」

「なるほど」

アルテミューナの様子を見ると、真っ直ぐ此方に向かって来る。

「リーザさん、小細工無しで来るみたいよ」

「正面から来ますか。いいでしょう、応じてあげます。シェミ、機体制御と照準のアシストをお願い」

【了解だよー!】

アヤは天井からスコープを出すと覗き込む。

「アルテミューナの性能は把握してます。この距離では此方が有利です」

アヤは狙いをつけるとレールガンを放つ。弾丸はアルテミューナの尾翼を掠りました。

「外しましたか。まぁ、姉さんなら避けると思いましたけど」

「え、本気で撃墜しようとしたの?」

「まさか」

[アヤ、お姉ちゃんを撃墜しようなんて、悪い妹ね。教育が必要かしら?]

リーザさんのドスの効いた声が通信越しに聞こえる。

「アヤ、やばくない?リーザさん激おこよ」

「これくらいで引き下がる訳には行きません」

アヤは速度そのままに、アルテミューナとギリギリですれ違う。

「うわぁぁ!アヤ!挑発しすぎじゃない!?」

「妹の意地です」

その後も高速ですれ違いつつ撃ち合ったり、人形で接近戦したり、再び、巡航形態で高速でドッグファイトをしたり…。


「アヤ、私の存在忘れてたでしょ…」

振り回された私はフォリオの食堂の机に突っ伏している。

「……そんな事はありません」

「今の間は何?」

「言葉が詰まっただけです」

「嘘でしょ」

「いいえ」

結局、数十分に及ぶ姉妹喧嘩は決着が付かず、引き分けとなった。アヤは本格的な模擬戦は久し振りなのに、リーザさんと互角に渡り合うとは、機体性能の差か、又はAIの恩恵か。戦闘中でも、AIはアヤの癖を覚え、最初はぎこちなかったAIも後半になると、アヤの考えを先読みし、回避運動や、射撃アシストをしていた。

「アヤ、なかなかやるじゃない」

「姉さん、私だって軍人です。最新機器を駆使し、上司を守る為には力が必要です」

「…ごめんね、弱い上司で」

「い、いえ!ヴァンテージさんはいるだけで部隊の士気が上がるので」

「私の役割ってそれだけ…」

「アーヤ、あんまり自分の上司をいじめちゃ、ふふ」

「リーザさん、途中で笑わないでくださいよ!」

「だって、ふふふ」

「ちょっと!私を忘れてないでしょうね!」

雛子が走ってやってきた。

「あ、雛子、珈琲飲む?」

「あ、うん、砂糖とミルク入れて、ってそうじゃなくて!」

「まぁ、落ち着いて雛子」

「ど、どうぞ、雛子さん」

雛子が席に座ると、ロジェが珈琲を持ってきてくれました。

「ありがと、ロジェちゃん。そだ、ロジェちゃん達も一緒に休憩しよ!」

「は、はい!ではでは、皆さんを呼んできます!」

すると、ロジェは食堂を出て何処かに行きます。

「皆?」

てっきり、親友のスイハを呼んでくるのかと思ったのだが。暫くすると、大勢連れて来ます。

「皆さんを連れて来ましたぁ」

「えーっと、大勢来たね…ボーセルさんに、サリバンさん、パーキンスさん、フェルテさん、スイハちゃん、えっと、どなたです?」

「あんまり出会わないとは言え、忘れるなんて酷いです!ヴァンテージ大佐!」

「カレン、私の上官に対して失礼ですよ」

「でも、おじいちゃんは覚えくれるよ」

「ダンフリーズ大佐は貴方の上官だから覚えてるのは当たり前でしょ」

「あ、そっか」

何だかアヤと親しいようだが、ほんとに名前が出ない。

「カレン・クライン大尉です!おじいちゃん、もとい、ジョニー・ダンフリーズ大佐の副官をしています!」

「ダンフリーズ大佐の秘書、だからアヤと親しいのね」

「はい!おじいちゃん共々宜しく!」

「お、おじいちゃんって、ダンフリーズ大佐ってまだそんな歳じゃ無いはず…」

私の記憶によると、ダンフリーズ大佐は49歳だったはず。

「おじいちゃんって…」

「最初は怒られましたけどー、今は怒られません!」

「そうなのね…」

それは、多分、ダンフリーズ大佐は諦めてる感じがする。

「ちょっと!カレン!上官に対してその口調は失礼よ!」

「えー、アヤ堅苦しいなぁー」

「ま、まぁ、アヤ、私は気にしてないし…」

クラインさんと話している内に他の方々は席に着いていました。そして、それぞれ、飲み物を頼んでいる。

「あの、ヴァンテージ大佐」

普段は冷静で淡々と職務をこなすフェルテが少し、戸惑った顔で此方を見ている。

「何かな?」

「アヤさんやスイハさんのように我々も名前で呼んでほしいのです」

「え?」

唐突なフェルテさんの要求に戸惑いを隠せないが、それだけ信頼関係が築けてるのだと、感じる。

「わかった。えーっと、フェルテさんの名前は、葵」

「はい」

「サリバンさんの名前はユイ」

「はーい!」

「パーキンスさんの名前は、アスナ」

「覚えてくれてたのですね」

「ボーセルさんの名前はツカサ」

「おぅ!由華音!宜しくな!」

しかし、イラストリアスのクルーはかなりの人数がいるので、全員の名前を言えるかって言われたら多分無理。

でも、サガリスの名前は可愛かった気がするが、思い出せない。

「それにしても、ロジェちゃんはいつの間に皆と仲良くなったの?」

「えとえと、2年前からです」

「2年前…」

アイリスと戦闘した後でしょう。

「過激派との戦闘後、皆でヴァンテージ大佐を支えようって事になって、それでまずは第一段階として、クルー同士の仲を深めようってなったんです」

「そうだったのね」

「そして、計画の第二段階として、ヴァンテージさんと親しくなると言うのがクルー全員で決めたのです」

「ぜ、全員…うん、頑張って覚えるね…アヤ、後で私のPCに顔写真付きの名簿お願いね」

「分かりました、ヴァンテージさん」

「全員の名前、頑張って覚えてね、お姉さま」

「む、雛子に言われたくない」

その後は頑張って名前で呼びつつ、会話をし、イラストリアスクルーと分かれてアヤと雛子と共に指揮官室へ向かう。

「ヴァンテージさん、全員の名前、覚えられますか?」

「部下達にあんな事言われたら覚えるしかないじゃない」

「流石です、ヴァンテージさん。それでこそ私の上司です」

「そう言うって事は茶化してるね、アヤ」

「…そんな事はありません」

「今の間は何?」

「噛んだだけです」

「そう言う事にしとくね」

最近分かった事だがアヤは嘘を言うと変な間はある。

「そう言えば、雛子はあの機体に慣れた?」

「エキシージですか?もちろん!」

私は覚えていないが、私が乗ってたらしい機体。重要な部分が無事らしく修理して使う事にしたようです。で、直せたのはいいのですが、元々乗っていた人達の影響でOSが特殊らしく、扱える人を選ぶ機体となっているらしい。しかも、OSを万人受けに調整すると、機体性能が下がってしまうので、調整無しで乗れる雛子の専用機となっている。

「じゃあ、これからは雛子一人で出撃出来るね」

「え、お姉さま、私と一緒に出撃したくないんですか?」

「そ、そんな事無いよ!」

「そう言う事にしときますね!」


数週間後、海に沈んだフィオレンティーナが回収されたと報告が入ったので格納庫へと行きます。

「フィオ、原形留めてたのね」

「よかったですね!お姉さま」

「でも、フィオが戻ってきた所で瑞穂はいない…」

「え、えっと、きっと何処かで元気にしてますよ!きっと!」

「ありがと、雛子」

格納庫へたどり着き、中に入ると、シャウラが出迎えてくれます。

「お待ちしておりました、ヴァンテージ大佐」

「フィオが引き上げられたって聞いたけど…」

「はい、此方です」

シャウラに案内された場所には、座り込んでいるフィオレンティーナがありました。その姿は大半の装甲が剥がれ、全体が黒ずみ、両足が膝から無くなり、頭部も右半分が抉れて中身が見え、唯一残った左腕は力無く垂れ下がっています。

「瑞穂…おかえり」

こうして見ると、今にも動きそうだが、私が呼び掛けても反応が無い。

「お姉さま…」

「分かってる、でも、瑞穂がいそうな感じがしたから。シャウラ」

「お呼びですか?大佐」

「ありがとう、フィオを回収してくれて」

「いえ、私としても気になった部分がありましたので。ただ、損傷が激しく、長らく海水に浸かっていましたので再利用出来る部分が殆どありません」

「そっか」

起動しない今、瑞穂が生きているか確かめる術がない。

「こんな時に何ですが、新たな機体が完成してます」

「ん、大丈夫。気にしないでシャウラ。案内して………さよなら、フィオ」

フィオに別れを告げ、シャウラの隣を歩く。そのすぐ後ろを雛子が着いてきている。

「兵器に愛着がつくなんて、指揮官失格ね」

「そんな事はないですよ!お姉さま!」

「私もそう思います。それだけ、大佐があの機体を大事にしてたって事ですから。それに、あの機体には大切な半身がいたなら尚更です」

「雛子、シャウラ…」

シャウラに案内されたどり着いた場所は以前、アヤのシェミリールミューナがあった格納庫だった。中には4体の機体があった。

「この短時間でよく4機も作ったわね」

「パーツが大量にありましたので。右の機体は手前から、シェミリールミューナ2番機、アイレミスティーナ、左は手前からレックスティーナ1番機、2番機です」

「レックスティーナ、1番機と2番機で全然姿違わない?」

「奥のレックスティーナ2番機が本来の設計図通りの姿です。手前は…色々あってああなりました」

「そ、そうなのね。で、私の機体はあのアイレミスティーナ?」

「いえ、此方です、大佐」

一番奥の正面にもう一機、そこにあったのは細部こそ違うが、フィオレンティーナの姿があった。

「これって…フィオにそっくりじゃないですか?お姉さま」

「そうです。大佐専用機と言う事でフィオレンティーナのデザインを流用してます。そして、これが機体の鍵です。最終調整はご自身で」

シャウラから手渡されたのはフィオと同じワインレッドの携帯端末だった。

「ん、分かった」

私と雛子は階段を登り、キャットウォークを伝って新しい乗機の前に行く。

「よろしく、新しい私のパートナー」

端末の電源を入れ、アプリを起動し、ハッチを開ける。中はシェミと同じ、複座だ。さっそく乗り込み、電源を入れると形式名と機体名が出る。


"XJL-13/1 Fiorentina-Nexus"


「フィオレンティーナ…ネクサス?」

『久し振り!由華音!雛子ちゃん!』

「え?瑞…穂…?」

「瑞穂さん!?」

コンソールのホログラムに何処かの高校の制服を着た瑞穂が表れました。

『驚いたでしょー?』

「瑞穂…生きてるなら…教えてくれたって…いいじゃない…心配したんだよ?」

私は堪えきれず涙が出ます。

『ごめんね、由華音を驚かそうと、シャウラさんにも協力してもらったの』

「でも、どうやってこの機体に?」

『それはね…えっと…私も気付いたらこの機体にいたの』

[それに関しては私が説明します]

「シャウラ?」

通信用モニターにシャウラが表れました。

[ラツィオ製の機体にはブラックボックスがあります。ブラックボックスの中には通常、戦闘データだったり、GPSが入っています。以前、フィオレンティーナのプログラムファイルを確認した時、瑞穂さんがいる場所がブラックボックスでした。なので、フィオレンティーナを回収した一番の目的はブラックボックスの回収だったのです]

「成る程ね。そのブラックボックスを再利用したわけね。それにしても瑞穂は一番安全な所にいるのね」

『えへへ、でも、そのお陰でまた会えたのだからいいじゃない。助けてくれたシャウラさんにも感謝しなきゃね』

「調子のいい娘ね。で、見返りに何かあげたの?」

『由華音、それ聞いちゃう?』

「まぁ、シャウラさんなら変な要求しないと思うけど…」

すると、瑞穂が頬を染めて呟く。

『えっとね、私の、全てを見せてあげたの…』

「シャウラー?女の子に何してるのー?」

「シャウラさん、そんな人には見えなかったのに…」

[誤解です、大佐、シグネットさん。大佐が多分、思ってる意味ではありません]

「言い訳は見苦しいよ、シャウラ」

[だから誤解です。話を聞いてください]

「お姉さま、一度シャウラさんの話を聞いてみましょ?」

「まぁ、一応聞きましょうか」

[私が見せてもらいましたのはプログラムです。瑞穂さんは理論上、プログラムで動いていますが、大半が解析不能でした。なので、解析できた部分を使い、出来ましたのがANIMAシステムです。残念ながら瑞穂さんの力を借りても自我を持ったAIは出来ませんでした]

「成る程、瑞穂、貴女どういう存在なの?」

『私もよくわからない。分かるのは機体と由華音に干渉出来る事かな』

ますます瑞穂の謎が深まった気がする。

「まぁ、瑞穂の事は置いといて、折角フィオに乗ってるんだし、試運転しなくちゃね!」

素早く最終調整を終わらせると格納庫の外へ出る。

「お姉さま、武装はほぼ一緒ですが、高速機動ユニット、ベガが付いてますので操作には気を付けてください。それと、アヤさんと上空で合流予定です」

「分かったわ、雛子」

滑走路まで歩いて行く。

「上手く行くかな?」

『大丈夫!私がサポートするから』

「じゃ、瑞穂、頼んだよ!」

『おっけー!』

[大佐、発着許可が出ました。何時でもどうぞ]

私達は顔を合わせ、頷く。

「分かったわ。フィオレンティーナネクサス、発進する!」

機体を発進させ、上空へ舞い上がる。

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