第30話「休みの日についての話!」
「ねぇ、みんなー」
それは休み時間のこと。
休み時間はあたしと琴音の席がある場所に七瀬と金髪がやってきて、10分間のおしゃべりを楽しむのがいつもの流れだ。
いつもは雰囲気と流れで誰が話題提示をするか決めるが、どうやら今日は七瀬の番らしかった。というか基本的にこいつが話題を振ることが多い気がする。
内弁慶極めてるから、仲良い奴に対してはコミュ力高いんだよなこいつ。
「みんなってさ、休みの日とか家でなにしてるの?」
「わたくしは好きなアーティストのライブに行ったり、本を読んだり、綺麗な景色がある場所に出かけたり、ですね」
「さすが琴音様!!! 幅広いご趣味をお持ちで素晴らしいです!!」
「どーいう感じの本読むんだ?」
「これも色々ですね。小説であったり、新書であったり……最近ですと【ゲテモノ妖怪大全集】という本が非常にかわいらしく、胸の奥がきゅんきゅんしましたっ」
妖怪大全集で胸がキュンキュンするってなんだよ。
やっぱこいつ常人とは違う感性を持ってやがるな
「よければお貸ししましょうか?」
「「いや、いい」」
あたしと七瀬が即答する横で。
「くぅ……妖怪大全集……こ、怖かったらどうしましょう…………ッ」
金髪が苦悶の表情を浮かべていた。
こいつたぶん、いや確信は持てないんだけど。
怪物とかお化けとか苦手そうなんだよな。
「琴音様…………ぜひとも、お貸しください…………ッ!!!!」
金髪が血涙を流しそうな勢いで言った。
やっぱホラー系とか苦手だろお前
こいつ琴音の為ならほんとすげー頑張るな。
「もちろんですっ! 明日にでも持ってきますね。静流さんはいかがお過ごしで?」
「私は基本的に仕事ですわね……化粧品事業の収益性分析、工場管理者との打ち合わせにモデルの写真撮影……やるべき事が余りにも多すぎて……余暇に手が回りません……」
「うわぁ……ほんと天上人だなぁ……」
「静流さんは高校生なのにすごいですね……」
「んだてめぇ、忙しい自慢は一番イタイぞ」
「はっ……まぁ? あなたのような蛮族には縁のない煌びやかな世界の話でしたわね。申し訳ありませんっ。おーっほほほほ!!」
「なぁこいつ殴って良い?」
「な、殴るのはダメだと思うよ……」
「時間ができた時はどうされるのですか」
「時間がある時は勉強か、もしくは琴音様の……あっ! い、いえ!!! 読書!!! 読書をしてますわ!!!!!」
何かを言いかけた金髪だったが、途中でハッとしたように声を荒げた。
だがもちろんそれを聞き逃すあたしではない。
あたしは格好のおもちゃを見つけたようにニヤッと笑った。
「琴音の、なんだって〜?」
すると金髪の顔が真っ赤に染まる。
「な、なんでもありませんわ!!」
「ほぉ〜〜? そうか〜〜?」
「なんですのあなた!!? 蛮族のくせに一丁前に私を揶揄うんじゃありませんわ!!」
「けっ、ど〜〜せ変なことしてんだろ!」
「へ、へへ、へへへへ、変なことなどしてませんわ!! あ、あなた名誉毀損で訴えますわよ!!!」
「うんうん、分かるよぉ静流ちゃん……わたしは分かってるからねぇ……うへへへ♡」
「姫さん、あなたまで!! 琴音様!! 本当になにもありませんから!!」
「……? あの、今どういうお話ですか?」
七瀬は何かを感じ取ってニヤニヤしている。
琴音はなにも分かっていないようだ。
そして動揺しながら顔を真っ赤にする金髪の様子は中々に滑稽だった。
けへへ。やっぱ1日に1回は金髪の動乱する姿を見るべきだな。
夜の寝つきが違う。
いや、ていうか待って。
金髪と七瀬、今、名前で呼び合ってなかった?
七瀬が誰かに下の名前で呼ばれる事なんてないから「姫さん」という呼び方がすごく耳に残った。
いつの間にか仲良くなってたのか。
まぁ……相手が金髪っていうのは七瀬の保護者であるあたしとしては頂けないが、誰かと仲良くなるってのは良い事だな。
「そこのゴリラ蛮族! そういうあなたはどう過ごしてるんですのよ!」
「誰がゴリラ蛮族だ!! てめーまじでぶっ飛ばすぞ! ちっ……はぁ、そうだな。まぁダチとどこか遊びに行ったり、YouTube見たり、漫画読んだりとか、そんな感じじゃね」
「ミズキさんらしいですね」
「あはは、ミズキちゃん寮でもいつもそんな感じだ」
「まー他にやる事ねーしな」
「あなた少しくらいは勉強したらどうですの?」
「嫌に決まってんだろうがッ!!!!!!」ドン!
「こんな気持ちのこもった『嫌』は初めて聞きましたわ……」
勉強……嫌だ!!
絶対にしたくねぇ!!
もう毎日の授業を寝ずに起きてるだけでも、本当褒めて欲しいくらいだ!
めっちゃすごい事だぞ!
授業を寝ずに受けるって!!
あたしが勉強に対する不満を抱いていると、七瀬が満足したように言葉を落とす。
「でもみんな色々だね〜〜あっ、わたしはね!」
「どーせ百合だろ」
「百合というもの、ですよね」
「百合の妄想とかでしょう」
「みんな決めつけすぎじゃない!!? いや、そうだけどさぁ〜!!!!」
あたしら3人が同時に発した同内容の言葉に、七瀬は少し不服なようだった。
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