第25話「女番長、後輩にいじられ倒す!」
「おい金髪ぅ〜〜!」
「な、なんですの……? ニヤニヤして気色悪いですわね」
一人早めに寮を出たあたしは学校に到着するなり、スクールバッグを机に置く事すらせず、一直線に金髪が座っている席へと向かった。
教室の一番前、左端の席。
そこに金髪は座っていた。
あたしはニヤニヤとした顔で金髪に歩み寄り、そして耳元に顔を寄せた。
「良い事教えてやろうか? けへへへ!!!」
「なんですのよ!!? 今日は一段と変ですわよあなた!!」
昨日の夜からずっと楽しみだったんだよ。
こいつにこれを言うのがよ!!
あたしは悪魔のように口角を上げた。
「昨日……あたしさ、琴音と二人きりで『デート』したぞ」
「…………………は?」
瞬間、金髪の目が大きく見開かれるのが分かった。
それから金髪がわなわなと震え出す。
「じょ、じょじょじょじょじょじょ、冗談は顔と態度だけになさい!! こ、こここ、琴音様と、でででで、デートですって!!!?」
「冗談じゃないし〜〜♪ ほんとだし〜〜♪ 向こうから誘ってきたし〜〜♪」
あたしが頭の後ろに手を組んでリズムに乗せながら言葉を返すと、金髪はとうとう我慢できなくなったように立ち上がり、髪の毛をくしゃくしゃと掻き毟り始めた。
「きぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!! 脳が!! 脳が破壊されますわッ!!!!! なんで琴音様はこんな蛮族を…………!!! ああああぁぁあ!!!! 悔しいぃぃ〜〜〜〜!!!!」
「けへへへへ!! ざまぁ見やがれってんだ!!!! ひゃっほーい!!」
頭を抱えながら机にバタンと倒れ伏す金髪を見てると、腹の底から爆笑が込み上げてくる。
いやぁ朝から愉快愉快!
良い気分の1日が始まりそうだぜ!
悔しがってる金髪を横目に、あたしは自分の席に着きながら、スクールバッグを置いた。
そしてスマホを取り出して、届いていたラインをチェックする。
こんな朝から誰だ?
不思議に思いながらラインを開くと、なんと数十件もの通知が来ていた。
おいおい、なんだ?
なんか事件か?
通知が溜まっていたのはラインのとあるグループだ。
それは中学時代の後輩、カナ、あたしで構成された総勢14名のグループ。
いつも一緒に悪いことしてた不良グループってとこ。
あんま普段はやりとりしねぇのに……今日はなんで…………って……!!
「いや、ちょ、待てこいつらぁぁ!!!! なんで知ってんだよ!!!?」
あたしはラインのトーク画面を見た瞬間、恥ずかしさと怒りで全身が沸騰しそうになった。
後輩達とカナのやり取りは
『ヒナタ:ミズキねぇさんまじかっけー!!』
『サチ:名言爆誕www』
『ナデシコ:過去一でしょこれ爆笑』
『カナ:人生の充実度っていうのは経験の多さだと思ってんだよ……』
『ヒナタ:ちょwwwwやめてくださいwww』
『ユイ:カナさん怒られますってww』
『サチ:それが楽しかろうが、どうだろうがな……』
『ハナエ:無理wwww死ぬwwww』
『リン:聖地行ってきた』
『画像添付:ラーメン屋『小次郎』店内。壁に貼られたポスターに名言が書かれている。その背景をバックにカラフルに髪の毛を染めた女子中学生が写っている』
『ミヤコ:聖地巡礼は強すぎww』
『ナデシコ:リンほんと最高なんだけど笑笑』
『サチ:竹田さんが姐さんの名言をポスターにしてくれてるの神すぎるwww』
そのトークを見たあたしの目にはすでに涙が浮かんでいた。
くぅ……こいつら……こいつらぁ!!
「めっちゃいじり倒してやがる!!!!! くそぉーー!! ムカつくーーーー!!!」
あたしは気が動転したように、両手で髪の毛をくしゃくしゃと掻き毟った。
それはつい昨日の出来事だ。
覚えてる。忘れるわけねぇだろ!
琴音を励ますためとはいえ、自分でもクサイ事言っちまったなって思ってたんだよ!!
竹田のおっさんに聞かれてるの恥ずかしいなって思ってたところだよ!!
くっそぉ……あのおっさんマジで絶対に許さねぇ!!
なに人の言葉を勝手にポスターにしてんだまじで!!
カナもこいつらもだ!!
「うぅ〜〜! くそぉ……ばかにしやがってぇ……!!」
あたしは半泣きになりながら高速でラインを入力する。
『ミズキ:おい』
『ミズキ:おまえら聴診器に乗るな』
『ミズキ:調子に乗るなボケ』
『ハナエ:ご本人登場だ!!』
『サチ:聴診器ww小さすぎて乗れないっすww』
『カズコ:姐さん! あの名言をお願いします!!』
『ヒナタ:本家きたww名言お願いして良いですか!?w』
『ナデシコ:名言よろしくです!笑』
『リン:これって本当に言ったんですか?笑笑』
『カナ:人生の充実度ってのは経験の多さだと思ってんだよ……』
『ヒナタ:wwwww』
『ミヤコ:カナさんやめてwww』
『リン:カナさんほんと好きですww』
『ミズキ:お前ら今週の土晩、朝日グラウンド集合。カナお前は後で電話な』
『カナ:ごめん。今スマホ壊れてて電話むり。電源も付かなくてかなりやばい状態』
『ミズキ:嘘つくな。じゃあ今何を使ってこのラインしてんだよ』
『カナ:スマホ』
『ミズキ:お前ぶっ飛ばすぞ』
『サチ:スマホwww』
『チサト:黙って見てたけどさすがに無理ww』
『ユイ:しんどすぎるwwwww』
『ハナエ:やっぱ姐さんとカナさんだなぁw』
こいつら……こいつらぁ!!
あたしは泣きながら机に突っ伏した。
恥ずかしすぎて死にそうなんだけど!!!!!!
なんだよこいつら!! 揃いも揃ってあたしをバカにしやがってぇぇ!
うぅぅ!!
絶対に許さないからなぁ!!!!!!!
あたしは今週末、とりあえず全員一発ずつビンタする事を決意した。
カナは往復ビンタ!
あいつはほんと調子乗りすぎだ!!!
「うぅ……くそぉ……くそぉぉ!!!!」
あたしは悲しさと恥ずかしさに咽び泣いた。
あとあと琴音と七瀬に聞かされたが、頭がボサボサになって机に突っ伏してる奴がクラス内に2人もいるという、なんとも奇妙な状況ができあがっていたらしい。
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