第15話

第15話



「今回の事件は、大きく分けて二つの項目に分かれる」


俺は暗い部室で2本の指を立てた。


人差し指を残して、中指をたたむ。


「一つは、神隠し。

……俺たちが根本的に解決したいのは、こっちだ。

これを解決して、沙夜子を取り戻す。

これが最終目標だ」


だけど、と俺は継ぐ。


「二つ目は、認識の書き換えだ。

これがある限り、俺たちがどんなに“神隠し”を主張しても聞き入れてもらえない。

言うなれば、全てが敵になる」


「……なるほど、だからこの結果が必要なんですね」


ニヤリ、と藤先生が笑う。


その手には、NOで埋め尽くされたアンケート結果が。


俺は頷いた。


「この結果を全校に出せば、誰もが考えるだろ?

___自分は“全員の名前を言えるのか”って。

そうすれば、自分達の記憶に懐疑的になる。

……それで良い。

認識の書き換えの突破口は、全員が自分を疑う事だ」


「……なるほど……だからアンケートを…!」


一高ワン子が目を見開いた。


「もちろんこれが抜本的な解決になるとは思えねぇ。

だけど、これがあれば沙夜子に相当近づけるはずだ」


……明日、とりあえずクラスの前で話す。


自分のクラスで認識を戻せれば、あとは自然に全校に広まっていくはずだから。



だが、その時の俺は一つ大きな点を忘れていた。

……そのプランを壊す、重要な要因を。

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