第11話


第11話


【竹花楽都side】


「んで?

どうだったんだよ」


図書館の前の廊下。


俺は昼休みに一高ワン子を捕まえた。


「先輩、仕事早すぎなのだよぉ」


「お前がちゃんとやってないだけだろ」


俺は舌打ちを我慢しながら彼女に紙を渡す。


筆箱の中にあったメモ用紙に、鉛筆で殴り書きしただけの代物。


並んでいるのは、ただの数字だ。

だが、それは十分な意味を持っていた。


「ふーん」


彼女はそれを両手に持って頷く。


「確かに、先輩の予想通りなのだね」


「だろ?」


俺は数字を指さした。


___まずおかしいと思ったのは、昨日の一高ワン子の話。


“知り合いが殆ど消えてなかった”。


彼女はそう言った。


だからこの現象___言うなれば“神隠し”に気が付かなかったのだと。


それに比べ、俺のクラスでは3分の1が消えていた。


……偶然というには、あまりに差が大きくないか?


そこで立てた予想は、「被害は3年の方が大きい」というもの。


案の定……というべきだろうか。


各クラスの花瓶の数を数えてみた結果は、あまりに明らかだった。


「一年生の方は2桁に行ってないのだね」


「そうだな」


一番少ないのは一高ワン子のクラス。


その数は0個。


そりゃあ、気が付かなかったのも当然か。


多くても7……平均して5個くらいだった。


一方、3年生は酷い。


俺のクラスがマシだと思うほどだ。


とあるクラスでは、生徒の数よりも花瓶の数の方が圧倒的に多かった。


まるで花瓶が授業を受けているかのような___


はっきり言って仕舞えば気持ち悪い光景が、そこに広がっていた。


「……むー」


数字と睨めっこしていた一高ワン子がうめく。


尖らせた口が曲がり、本当に睨めっこしているかのような表情。


「ブスになんぞ」


「うるさいのだ!

なんで3年に被害が広がってるのか考えてたのだよ!」


ギャースカギャースカ騒ぐ彼女。


よくもまぁ、元気なことだ。


俺は一高ワン子を無視して踵を返した。


___次に頼むべきは藤先生か。


一高ワン子は3年にはそんなに顔が広くない。


教師としての特権を使ってもらおうか。


背後から一高ワン子の喚き声が聞こえた。


「無視は駄目なのだよーー!!!!」






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