第5話

第5話


【夢術管理協会/後輩side】


魑魅魍魎ちみもうりょうというものは、この世に実在するだろうか。


じゃあ、人を喰い殺す怪物は?


……答えは、YES。


そいつらが実在してしまうのが、この世界なのだ。


信じられないだろう。

だが実際いるんだから仕方がない。


その怪物の名は、【夢喰い】という。


ここ10年でかなり数は減ったが、それでもこの世界には、数千もの夢喰いがいると言われている。


しかも、奴らは人間を喰い殺すのだ。


残忍なまでに喰い殺して、自分は生き延びていく。


当然だが……そんなものはいない方がいい。


その芽は早く摘んでおく方がいい。


それが出来ないなら?


……徹底的に、データとして管理すべきだ。


夢喰いの卵である【夢術】を持つものは、管理しておくべき。


それが、俺達【夢術管理協会】のモットーな訳で___


「そんな仕事に、これ要りますか」


俺は目をこすりながらぼやいた。


分厚い書類にビッッッッシリと書かれた小さな字。


「私達には要らないさ、こんなもん。

だけどね……お偉い方がどうしても欲しい〜って聞かないもんでね」


ボールペンでトントン、と書類を叩くショートカットの女性。


少し寒いのか、彼女はスーツジャケットを肩にかけて、足を組んでいた。


「……どうせマニュアル通りなんだろ」


「そういうのは言わないお約束っすよぉ、後輩くん」


俺の呟きすら、彼女は拾い上げてしまう。


うっせぇな。


俺は内心舌打ちしながら書類をめくった。


「良いよ良いよ雑で。

どうせ誰も見ないんだから」


「それで何かミスあったらどうすんですか」


楽観的な彼女に、俺は内心舌打ちをもう一度見舞う。


「うわぁ、真面目だねぇ。

……んじゃ、私は調査行ってくるから」


颯爽と立ち上がるが否や、彼女はスタスタとオフィスから出て行った。


「……ったく」


あの女上司、仕事はできるんだが。


俺はデスク上の缶コーヒーを鷲掴みすると、一気に口に流し込んだ。


……彼女が何の調査に行ったかは分かってる。


人でもない、夢喰いでもない。

ただもう取り返しのつかない。


そんな怪物を殺すための、調査だ。


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