「再会」

「え…なんでアンタが…」


 私の目の前に現れたのは、海外に引っ越す、と中学3年のときに私にそう告げた私の元彼。もう会わないと思ってた。だから、遠距離恋愛はせずに別れた。その方が、お互い、負担にならないと思ったから。


 あの人が引っ越してから10年。なぜこの10年という時間ときを経たにも関わらず出会ってしまったの?もうこっちは忘れかけてたのよ?忘れようとして新しい彼氏作ろうとして作れなかったという事実があるけど。


「海外行ったんじゃないのアンタ。なんで日本にいんのよ。」


 あの人がどんどん私に近づいてくる。


「まあまあ、それは置いといて。でも、会えて良かったじゃないか。元気そうで何より。お前、彼氏はできたか?まあお前ごときには彼氏はできないだろうな。俺という存在があるんだから。」


 あ、忘れてた。私、この人と別れた理由もう一つあったわ。こういうナルシストみたいな発言が大嫌いで別れたんだわ。あーあ。こんなナルシストが何で日本に帰ってきちゃったのかなぁ。アンタみたいな性格は海外が一番似合うわよ。


「失礼ね。あれから10年経ったのよ。彼氏の一つやふたつ、できたに決まっているでしょう。」


 こんなの真っ赤な嘘。彼氏ができたんなら今でも実家暮らししてないっての。てか、早くどいてくんないかな。これから、カフェで仕事をしたいのだけど。


「あのさ、そろそろいいかな?用事があるんだけど。」


 私があいつから離れようとした瞬間。


「おーっとと。ちょっと待ってお嬢さん。もう一度俺とやり直さないか?この俺とまた付き合えるんだぜ?お前にとっては、大変光栄なことだろう?どうだ?やり直さないか?」


 なーんかこいつが日本に帰国した理由わかっちゃったかも?この性格が嫌われたんでしょう、あちらで。住むって言ってたから息子の評判が親に来て強制帰国…ってとこかしら?


「すみません。本当に急ぎの用事があるので。」

「それって、彼氏よりも大事な用事なの?俺より大事なものがあることってダメじゃなかったっけぇ??俺の言うことは絶対、だろ??」


 あーうぜえ。とっとと消えてくんねえかな。用事があるのは本当だ。あの質問ってさ、要するに、『仕事と俺、どっちが大事なんだよ?』って言ってることと同じでしょ?そりゃ、仕事の方が大事でしょうが!!会いたくもなかったお前と今没頭している仕事を天秤に掛けられてるんだよ?答えはもうわかりきってることでしょう!


「あの、そんなにしつこいと警察呼びますよ。」

「どこらへんがしつこいって言うんだよ?」


 そういうところだよ!!


「お前さぁ、照れ隠しも程々にしろよ?警察を呼ぶなんてこと、お前にできないだろ?」

『私が通報いたしましたので。』


 その声は私の真横からした。隣にいたのは、175cmくらいの大学生の男性。

 横顔がとても綺麗で、見惚れてしまいそうなほど美しいものだった。


「は?お前誰だよ?俺らの話に他人が首突っ込んでんじゃねえよ。」

「他人じゃありませんよ。僕はこの子の彼氏ですよ。」


 私が、え?と思っていると、その男性は私の顔を見て、『今は僕に合わせて』と言っていたので、合わせることにした。


「はぁ?!何でお前彼氏作ってんだよ!!!俺という存在がありながら!!い、いつからだ!」

「二年前ですよ。あなたが海外へ引っ越した8年後に僕たちは出会いました。」

「へ、へえ?な、なら、そいつの名前、知ってるよな?」

「ええ。小渡咲穂こわたりさきほさんですよ。」


 私は『何で私の名前知ってるの?』という質問は置いておいた。


「あ、合ってやがる…た、誕生日は!」

「4月9日」

「血液型!」

「A型」

「年齢!」

「22歳」


 あいつは、嘘だろ…という顔をしている。でもなんでこんなに全部わかっているんだろう。会ったことあるっけ?


「俺…彼氏なのに誕生日知らなかった…」


 は?それで彼氏名乗ってお前何様?


「今日はこれまでにしてやるよ!」

「今後は、警察のお世話になってくださいね」


 ウーーーウーーーーー


「嫌だ…嫌だあああ!!!」


 だっさ(笑)めっちゃ走ってる。でもおかげであいつを取っ払えた…


「あのすみません。」

「大丈夫でしたか?!」

「あ、はい。大丈夫でした。ありがとうございました。でもなんでそんなに私のこと知ってるんですか?」

「あなたの後輩だからですよ。大学の。」

「え?」

室瀬建都むろせけんとと申します。」

「あ、室瀬君?!久しぶりだね!もしかして、痩せた?」

「はい、痩せました。咲穂さんの隣に見合うような男性になるために。」

「どういうこと、?」

「咲穂さん、ずっと前から好きでした!付き合ってください!」


 いきなり告白されたんだけど?!…でもこの人なら私を守ってくれそうだな。


「うん。喜んで!」

「え!ありがとうございます!!」


 室瀬くんはとても喜んで顔をしていた。とんでもない再会を果たしてしまったけど、世界一幸せな再会もしたかもね。








 ※この話はフィクションです

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