「時計と向日葵」

注意!今回の短編小説にはホラー要素、残酷描写が含まれています。苦手な方は読まないことを推奨いたします。




私の愛する彼は向日葵ひまわりのたくさん咲く季節に私を残して他界しました。

彼はとても私に優しく、私が変な連中に絡まれている時、すぐにでも倒すというようなヒーロー感が溢れ出ていてそんな彼がいつも私に言ってくれる言葉は、


――――必ず俺が麻耶まやのこと守るよ。


でした。私にとって、彼の存在はとても偉大でした。そんな彼が他界してしまったのは、交通事故でも持病でもありません。いや、交通関連じゃないから交通事故ではないだけで、事故は事故でした。そのときの事故について、少し話したいと思います。



――――あれは私達が付き合って3年経った頃でした。私達はいつものようにデートをしていました。でも、デートした場所はいつものところではありませんでした。

それが、彼の不運の結末に繋がったのかもしれません。私達は、あるカフェに行きました。至って普通のカフェ―――そう思った時点で私達の結末はわかりきっていたことだったと思います。


『麻耶。何食べる?』

『パンケーキ食べたい!』

『麻耶、カフェに来るといつもパンケーキ食べるよね(笑)』

『だって、カフェで食べるパンケーキって格別に美味しいんだもん!』


私達は各自注文するものを決め、注文をしたときのことでした。店員さんがいきなり意味深なことを私達に言ったのです。


――――あなたたちもいずれ飲まれるのヨ。


私は店員さんの独り言だと思っていたので、何も気にせずスルーしました。


しばらくすると、パンケーキは来ました。


――――そのをかけて食べんさい。


パンケーキにいちごシロップは全く珍しくないので、ここのカフェはいちご派なのだなあとばかり思って、なんの疑いもなく、かけました。ですが、そのシロップはあまりにも赤が強く、サラサラな部分があったり、粘っこい部分があったりと、少し違和感を覚えました。


『どうした?麻耶。』

『え?あ、いや。なんでもないよ。いただきます。』


一口、口に入れると、今まで食べたことのないような味がして、そこにあったはちみつを口の中にぶっかけました。お行儀が悪いことなんてわかっています。だけど、奇妙な味で、甘さがなく、今すぐにでも特別甘いものを口が欲していたのです。なので、仕方のない行為でした。当然、彼はびっくりしていました。私は、別になんでもないよ、と言いましたが、なんでもありすぎました。


なんとか全て食べ終え、彼も食べ終えたので、お会計をしようとしたところで、私は猛烈な吐き気をもよおしました。私は彼にお手洗いに行ってくると言って、お手洗いに駆け込みました。


事後、私が落ち着いたと思ったら、便器の中はとても真っ赤で、ブクブクと泡が吹いていました。ここにいてはいけないと察した私は急いで彼の元へ急ぐと、彼は血まみれでした。彼の体を見ると、心臓、胃、みぞおち、横腹、背中に刺し傷がありました。私は急いで救急車を呼んで、私も一緒に救急車に乗りました。


一刻も早く、彼の病室に行きたかったですが、面会の時間が終了の時間でしたので、私は帰らなければいけませんでした。


翌日。今日も土砂降りの日。仕事を終え、少しでも早く彼の元へ走りました。彼を担当する看護師さんによると、彼はもう手術ではなんともできない、力は尽くしました、と医者から伝言ですと言われました。


私は現実を受け入れることはできませんでした。これはきっと悪夢だ、悪夢から早く覚めてくれ…!と願っても全く覚める気配はなく、ただただ外は雨が降るばかりでした。なんともできないということは、もう…。彼との幸せだった日々は今後もう送れない。私は、なにかに意識を移そうと思い、目に写ったのは、午後4時24分。昨日、彼が刺されて倒れていた時間と全く同じ時間でした。そして、彼は時が進む時計とは裏腹に他界しました。私は泣くことしかできませんでした。私は窓の方を見ると、土砂降りなのにも関わらず、向日葵ひまわりが満開に咲いていました。


私はこんなときにでも疑問に思いました。


『あ、あの…看護師さん…土砂降りなのになぜ向日葵ひまわりが満開に咲いているのですか?』


看護師さんはきょとんとし、


向日葵ひまわりですか?どこにも咲いておりませんが…』


と言いました。私は悟りました。彼は向日葵ひまわりのようにたくましい。

彼が生まれた時は、今日のように向日葵ひまわりが満開に咲いていたという。

彼の名前は、向日葵ひまわりのようにたくましくなってねという由来から、向日葵ひまわりの日に向かうという字を取り、日向ひなた


彼はこんなときでも私に、『泣くなよ。』と言っているようでした。

そして、彼はにっこりと向日葵ひまわりのようにたくましい笑顔を浮かべた気がしました。





後日、少し気になったのであの奇妙なカフェにもう一度行こうとしたら、そこには違うお店がありました。通りすがりの人に、ここにあったカフェは潰れたのかを聞くと、カフェなんて元からない、ずっとこの店しかないと言われました。スマホのマップで調べても、そのようなカフェは何一つ見つかりませんでした。一体、あのカフェは何だったのでしょうか…。未だに明らかにされていません…。いつかまた現れるかもしれないと思うと寒気がして仕方がありませんね…。皆さんも、奇妙なカフェには気をつけてくださいね。











※この話はフィクションです







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少々怖かったでしょうから、少しでも怖さを和らげる筆者・凪からあとがきです!

短編ですが、いつかホラー要素が含まれたちゃんとした小説を書きたいと思っていたので、今回はかなり自信作です!自信作がホラー系ですみません…!!!次話からは淡い甘酸っぱい恋愛小説書きますね!

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