第11話 親に対する不満⁈



 「パパとママは世間体ばかり気にする見栄っ張り。子供の頃からズ~ッとそうだった。よその子との比較が大好き。そして…テストで良い点数を取ってくると誇らしげに褒めてくれた。だけど最初のうちはその点数に歓喜して喜んでくれていたが、それも慣れてしまえば当たり前。私はいつも完璧な自分を演じていたわ。本当は自分の性自認(同性愛)をズ~ッとママに相談したかった。私が感じた違和感は幼稚園の頃からだった。私が異性の服それは……例えば青いTシャツと短パンに髪の毛は短くしたいのに、ママは私が青い服を着るのが気に食わないらしく、どこかに仕舞って着れなくなった。そして私の気持ちも考えず……例えばワンピ-スに長い髪には、ず~と抵抗が有ったわ。嫌で嫌で堪らなかった。どうして自分の想いが叶わないの?何故自分自身のたった一度の人生を、親だけの為に生きて行かなければいけないの。こんなの生きている意味ないじゃん?どうして……どうして……分かってくれないの?本当は親は子供の為だったら命を捨てる事だって出来るんじゃないの?……でも……でも……うちの親は、子供が優秀なのは当たり前。そして……よその子と比べて……その対比の違いにうっとりして……それが当たり前になって、子供の悩み事に耳を傾けようとしないばかりか、もう完全に思い上がってしまっていて、うちの子は当然ルックスも完璧、成績も優秀それ以外考えられない傲慢極まりない増長ぶり。そんな思い上がり親に私が(同性愛者)だなんて打ち明けられると思っているの?一番苦しい時に力になってくれるのが親じゃないの?親にすれば私は最大の高級アクセサリー。そんな思い上がりの親に私の性的指向を打ち明けたら、私を愛してくれなくなる……それが……それが一番怖いの。だから……だから……隠れて自分のありのままの姿をさらけ出しているんじゃないの。その、自分の欲望を解決するには、まずお金が必要。そして…私が生まれ変わる為の道具は、秘密の場所トランクルームに預けてある。だから私は隠れて自分の好みの格好をして街を歩いているの」


 一体誰が同性愛者なのか?殺害されたTの息子勝君なのか?菊池凛音なのか?謎の多い生徒理生なのか?


 その事実が判明するのは、まだまだ先になりそうだ。



     ***


 それではサッカー部のスタ-で時々小説研究サ-クルに通う立花流星君と、小説研究サ-クルを発足させた女子黒山幽香ちゃんは、首なし死体事件に興味津々だったが、新たな事件の真相に辿り着く事は出来たのか?


 その前に流星の家庭環境に何やら不穏な空気が漂い始めたらしい。

 それは一体どういう事なのか?


 流星の家族は以前にも紹介したように、父親の女性問題で両親は離婚していた。そんな両親の離婚という不幸を乗り越え、今現在は母も元気を取り戻し以前の生活が戻りつつある。


 だが……その母が、最近夜家にいない事が増えてきている。母はこんな夜に何処に出掛けていると言うのか?


 母は以前から趣味の英会話教室に通っていた。どうも……最近担当の英会話教室の先生と付き合い出したらしく、遅い帰宅となっていた。


 そして…最近は夫がいないのを良い事に、ちゃっかり一緒に家に帰って来る事も増えて来ている。幾ら高校生で親の事など無関心と思えども、この家庭は母子家庭である。離婚と言う悲劇を乗り越えて来た強い絆が有る。それなのに、図々しく上がり込んで最近は夕食も一緒に食べて行く先生に怒り心頭の流星だ。そして最も気に食わないのが「先生をお送りして来るわね」と言って2人で出掛けたは良いが、数時間帰って来ない事が増えている。今までは母に甘えて学校での些細な出来事や悩み事を相談するのが日課だったのに……その時間が奪われてしまった。


 流星は高校生と言えども、父と離婚して落ち込んでいた母を精神的に支えてきた自負が有った。そして…母との絆は父がいた時の何倍にもなり、誰も2人の絆を揺るがす者などない、強い絆で結ばれていると思って疑わなかった。


 それなのに……父と離婚してから僅か2年足らずであんな男に、母を持って行かれそうでイライラが募っている。それだけ母を取られたくない。自分だけの母であって欲しいと切に願っている。だから危機感で一杯でどんな些細な事も見逃さない。

 

 そんな神経過敏になっている流星が感じる母の言動の数々。


 先生が家に来た時は一生懸命腕を振るって料理を作るので、化粧が多少剝がれて来るし、味見もするので自然と口紅も所々取れて来る。それなのに……先生を送り届けて帰って来た時は、何か……母ではない……何かが憑依したような怪しく美しい母を目の当たりにしている流星。


 それは……出掛ける時は所々剝がれていた化粧が見違えるほど整えられているのを見逃さなかった流星だった。紅を薄く引いた透き通るほどの美しい母に変身して、帰って来るのだった。


(僕のママを奪おうとするあの男が許せない。どうしてママは僕だけで辛抱が出来ないのさ。あの男とこんな時間まで何していたんだよ。そんな……そんな……不潔な……女のママなんか……想像したくもない!)


 だが……そんな受け止められない、はがゆい思いの流星の心を弄ぶかのような悲劇が起きた。


 それは……流星が全国サッカー選手権に出場して帰宅した日の事だ。最優秀校の呼び声高い学校だった事も有り、本来ならば順当に勝ち進めば1週間ぐらいかかる所だったが、予想に反して2回戦で負けて思いの外早く帰還した日の事だ。


 いつもの事だが、流星は母を驚かすのが大好きだった。今回は2回戦で敗退したので母はガッカリするに決まっている。それでも4日ぶりに会う息子にきっと喜んでくれるに違いない。そう思い忍び足でリビングの扉を開けた。


 するとあの男がソファーに母を倒した状態で母に重なり、いやらしい欲望剝き出しのギラギラした表情を晒し、行為に及んでいる最中だった。下着が散乱して半裸状態の母はスカ-トがめくれておっぱいも露わな状態になり、その薄汚い男の欲望を受け入れ熱い抱擁のさ中だった。


 驚きとショックと汚らわしさで怒れた流星は、駆け足で家を出てどこまでも走った。


「何で……何で……そんなことが出来るんだよ?俺だけ……俺だけの……ウウウウッママだろう?ウウウウッワァワァ~~ン😭ワァ~~~ン😭」


 強い絆で結ばれていると思って疑わなかったのに、あんな姿を見せ付けられた流星は怒り以上に、女の母を受け入れる事が出来ずに「僕のたった1人のママなのに……あんな汚らわしい男と……さっきの姿は一体何だったんだよ。ウウウウッ(´;ω;`)ウゥゥ」流星は只々悔しくてどこまでも……どこまでも走った。


「不潔だ!許せない!」

 そんな……どうにも出来ない気持ちが全てを支配してしいた。


 こんな事件が有って以来泣くだけ泣いてスッキリ割り切れたのか?すっかりマザコンから脱皮して、部活のサッカーと小説研究サ-クルに力を注いでいる流星。  


 そして…廃墟に落ちていた物的証拠で、イヤリングの情報もゲットしていた流星と幽香は、早速興味津々で首なし死体事件の謎を解き明かそうと躍起になって走り回っている。

    ***



 それでも……あの廃墟に落ちていたイヤリングは一体誰のものだったのか?


 実は…あの時アルバイト先のコンビニから急遽人手が足りないので、穴埋めに入る事となったポ-ルに勝手に車を譲ったAが、仕事終わりにコンビニの女店員で密かに付き合っていたサチという女店員に送って貰っていた事が判明した。


 その時送ってくれた女店員サチの物なのかは分からないが、現場の廃墟に到着して車が無い事に気付いたAが大騒ぎしたので、サチと辺りを探し回った事は十分考えられる。という事はサチのイヤリングだという事なのか?それから……2人は恋人同士だから不利になる事は言わない。何か……隠し事が有るかもしれない。


 早速長瀬と田淵の両刑事はそのコンビニに向かった。


「何か……隠し事しよったかもしれん。早う行こまい」


「本当ですね。あの2人に何か……隠し事が有るかもしれません」




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