第34話悟の思惑と部員

生徒会長三田村涼子は失意をハッキリと顔に出し、音楽室を去った。


すると、若宮悟はプッと笑った。

「失礼しました」


その若宮悟の笑顔に、音楽部がドッと笑う。

「いい気味かな」

「あいつ、嫌い」

「泣き顔だったよね」


そんな声の他に心配する声もある。

「大丈夫かな、嫌がらせされない?」

「あいつ、陰険かも」

「親父の威を借りるよね、あからさまに」


悟は、含み笑いで、心配の声を抑えた。

「M都議は、落選確実だよ」

「ゴシップ弾けたでしょ?」


部員は、ヒソヒソ声になった。

「あ・・・賄賂疑惑とパワハラ?」

「うん、下請けを苛めたらしい」

「地元商店街も、後援しないって」

「来週選挙か・・・」


悟は、そのヒソヒソ声も抑えた。

「ただ、彼女を責めるのは可哀想」

「ショックが続くだろうし」

「今、生徒会長辞められたら、選挙になって、全校に迷惑」


声を大きくした。

「まっとうに練習に励みましょう」

「生徒会のための音楽部ではないよ」

「僕らの音楽を仕上げよう」


部員の声が「はい!」と大きく揃った。


悟は、再び指揮棒を振り下ろしている。

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