第5話 体育祭に向けての練習。
「はぁ……憂鬱だ……」
「どうしたー? そんなに嫌か? 」
「嫌だよ! どうして……なんで俺が……」
「まぁしゃーないな。みんなしっかり数出てるから、お前だけ出ないなんてないだろ」
「にしたって……こんなの、あんまりだ……‼ 」
「そこまででもないだろー」
今はお昼休みも終わって体育の時間。体育祭の練習をやるとなって、早速取り組もうとなったところで絶望の宣告を受けたのだ。
「なんで、俺が、全員リレーの、スタートを、やらなくちゃ、いけないんだ‼ っていうか高校生にもなって全員リレーとかやんなくていいだろ‼ 」
「まぁ選抜リレーだけやっときゃ良いとは俺も思ったけど、前からあるみたいだし仕方ないな」
「それに加えて俺は、騎馬戦と借り物競走にも出るんだぞ‼ 終わってやがる‼ 」
「いや、それくらい良くないか? 」
「良くないわっ! なら、
「えー? 俺? 俺はなー、綱引きとパン食い競走と、あとは俺も全員リレーだな」
うわ……パン食ってる姿まで様になってそう…………じゃなくて!
「綱引きとか俺の出場競技と交換してくれよぉ! 騎馬戦、上に乗れって言われたんだけどぉ‼ 」
「まぁ、お前軽いしな」
「五十キロって軽いの⁉ 初耳なんだけど⁉ 」
「男子高校生の平均体重は五十八キロ前後だって聞いたぞ」
えっ、そうなの? まじで初めて知った。てか俺八キロも平均より軽いんだ。確かに軽いな。…………じゃなくて‼
「軽くても騎馬戦の上に立つとか無理なんだけど! 普通に怖いんですけど‼ 速攻で負けてリタイアなんですけど‼ 」
「まぁ頑張れとしか言いようがないな」
こいつ、ムカつく顔してるな…………くぅ~殴りたくなってくるぅ~くそぅ、したり顔しやがって! 絶対いい成績残してやる‼
「はぁ……にしてもマジで嫌だなぁ……体育祭」
「そんなにか? 俺はいつもよりは少しだけ楽しみだけどな」
「マジか……お前頭どうかしてるんじゃないか? 」
「ははっ、ひどい言われようだなー。まぁいいけど……
「そうだね~残念だな~壊くん楽しみにしてなかったなんて~ね?
「えっ⁉ わ、私に振らないでよ! 」
は? こいつらどっから湧いてきたんだ? 全く気付かなかった。ていうか女子は別行動じゃなかったっけ?
「てか、何を楽しみにすることがあるんだ? 体育祭なんて地獄でしかないだろ」
何度も言っているが、体育祭なんて消えてしまった方がいい。あくまで個人的な意見だが、俺の考えは変わらない!
「あー、多分壊くん体育祭の話全部聞き流してるから把握してないんだと思うよ」
「え~そうなの~? じゃあ言わないでおく~? 」
「いや、そこまで言われたら気になるだろ⁉ 」
「でも、壊様は体育祭楽しみにしてないんじゃなかったっけ? 」
くっ、こいついちいちムカつく顔するなぁ! 今のは完全に煽りに来てやがる! どうせ内心ニチャニチャしてんだろくそっ!
「ああ、開催取りやめてもいいまである」
ならこっちは徹底的に決め込んでやる。まぁ正直、当日になればこいつらの言ってることもわかるだろうしな。
「それより、なんで女子の二人がこっち来たんだ? 別行動だった気がするんだが」
「あれ? 聞いてなかったの? 全員リレーは文字通り全員出るから、女子も一緒に練習するってなったんだよ? 」
「そうだったのか」
全く聞いてなかった。俺まじで無意識に体育祭関連のこと全部聞き流してるわ。普通にヤバいな。
「おーい、そっちの四人もこっち来てくれー。そろそろ始めるぞー」
「は~い」
クラスメイトに呼ばれたので、朝姫が返してみんなが集まっているところへ歩き出す。俺たちも朝姫について行く。
「おー、来たな。
「あ、そういえばそうだった。俺最初なんだよな。最悪だ。ああ……」
「まぁ、頑張れ」
この、俺たちを呼んで、今俺に『頑張れ』と言った、
希空は小学校からの幼馴染にあたる存在だ。昔から学級委員などを引き受けて、人当たりのいい生徒だ。そして、俺の体育祭での悲劇を知っている者の一人だ。
にしてもなんで俺の周りにはイケメンと美少女ばかりしかいないんだ? 顔面偏差値高すぎるんだが? そん中に俺一人放り込むとかイジメか? イジメなのか? 俺悲しいよ。どうせなら俺もイケメンにしてほしかった。
『それじゃ、位置について――』
ん? もう始めるのか。えっと、みんなクラウチングスタートの構えしてるからとりあえず俺もやっとこ。
『よーい――――』
はぁ……早く家に帰りたい。暑い。ていうかマジで何で俺最初なの? 希空はあの悲劇知って――――
パァン‼
ズルッ
「え――――」
ズベシャァァ‼
『時雨ーーーー‼ 』
あー……
「あの……壊くん大丈夫? 」
「ああ、大丈夫だ。これくらい慣れてる」
「それは……すごいね? 」
何がだよ。まぁ確かに顔面からすっ転ぶことに慣れてるのは俺くらいしかいないか。
「はい」
夜宵が手を差し出してきた。こういう優しさは素直にありがたいな。
「ありがとう」
「ん゙っ、うん」
夜宵の手を取って起き上がる。その時、夜宵の顔がはっきり見えた。
ん? なんか夜宵の顔が赤い気がするな……。
「なぁ? 熱でもあるんじゃないか? 顔赤いぞ」
「へっ? えっ、あ、い、いやいやいやいや、き、ききき気のせいだよ! うん! 気のせい気のせい」
「そうか? 」
いや、気のせいにしてはすごく動揺してるように見えるけど……まぁ本人が大丈夫って言ってるんだし大丈夫だろう。
「まぁいいや。体調悪くなったりしたらすぐ言えよ? すぐ転ぶ俺が言えた立場じゃないが」
「う、うん。ありがとね」
◇◇◇
「時雨、大丈夫か? 」
「ん? ああ、もう大丈夫だ。もう一回やるか? さっきはただ考え事してただけだから――――」
はぁー……いや、破壊力ヤバすぎるよぉ……。もぅ……壊くんのあの気を許したような顔! あの、こう、胸がきゅうってなる‼ お風呂上がりの壊くんを見た時にも感じるやつ‼
それに、壊くんと学校で手繋いじゃった‼ あ~どうしよう……ずっと一緒にいるのに、なんかドキドキしちゃった…………。
「――ちゃん! 夜宵ちゃん‼ 」
「はっ! ど、どうしたの⁉ 」
「どうしたの⁉ は、こっちのセリフだよ~。なんだかずっとぼーっとしてるし~」
「い、いや、それは何でもないっていうか……」
すると、朝姫が顔をニヤッとさせた。
「ふぅ~ん……そうなんだ~。私はてっきり壊くんと何かあったんじゃないかな~って思ったんだけどな~」
「な、なななななんでもないって! ほんとに! 何でもないから‼ 」
「ふふっ、冗談だよ~。ほら、私たちも位置に着いとこ~? 」
「う、うん……」
もう、朝姫はたまにこうやって意地悪してくるのよね……どうせわかってるくせに……。
まぁいいや。今は切り替えなくちゃ! さっきは思わずぼーっとしちゃったけど、クラスの皆には迷惑をかけられないし、どうせなら勝ちたいからね!
さ、体育祭に向けて頑張るぞー‼
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