配信20:スク水でホラーゲーム配信

 とんでもないお宝を拾ってしまった。

 いや、忘れよう。


 それよりも俺は整理整頓を徹底的に進め、田村さんの部屋を綺麗にした。


「……ふぅ。これで完璧」

「わぁ、たった数分でここまで……」

「全力を出せばこんなもんさ。それより、配信の件だ」

「うん、さっそくやろっか」


 俺は田村さんのパソコンを覗いていく。スペックは高いようだな。配信環境も悪くない。


「アカウントは作り直した?」

「一応ね。でも、またゼロからやり直し」

「問題ない。胡桃として配信すれば、あっと言う間さ」

「がんばってみるね」

「だから、今日はスク水を着るんだ!」

「ス、スク水ぅ!?」


 そう指示を出すと、田村さんは顔を真っ赤にしていた。だが、これくらいはしないと視聴者は獲得できないのだ。主に男性視聴者を。


「恥は捨てるんだ。今までもメイドやバニーガールをしてきたじゃないか」

「そ、それはそうだけど……猪狩くんを前にすると恥ずかしすぎて死んじゃうよぅ!」


 涙目で必死に拒否する田村さん。

 だが、俺は心を鬼にした。

 というか、田村さんを……胡桃を再起させるにはエロを使うしかないんだ!


「俺のことは気にするな!」

「でも……」

「ここで諦めたら、このままフェードアウトして自然消滅だぞ。もったいない! いいか、今の状態なら直ぐにナンバー1になれる絶好のチャンスなんだぞ。逃したら、もう一生逆転なんて出来ないと思った方がいい」


 人々に忘れられたら、這い上がるのは中々難しい。飽きたらファンなんて簡単に離れてしまうからな。配信とはそういう厳しい世界だ。


 けれど今は違う。


 連日トップニュースにも掲載され、掲示板でもいくつもスレが乱立するほど。SNSのトレンドには常に『胡桃』の名前が載っている。

 ここまで至るに普通は何千万、何億もの金がいる。いわゆる広告費が発生する。しかし今は無料でここまで宣伝されている状態。ありがたいことに勝手に宣伝され、勝手に名前が広まっているのだ。


 口コミの力は凄まじい。


 若者から年配に至るまで情報が喧伝していくのだ。


 だからこそ、今しかないんだ。


 俺は必死に説得した。


 すると。



「……分かったよ。猪狩くんの指示に従う。わたし、がんばりたいから」

「田村さん……。ああ、がんばろう!」

「うん! じゃあ、着替えるから」


 俺はいったん部屋の外へ出た。

 しばらくして田村さんが入ってきていいと言ったので、俺は戻った。

 そこにはスク水姿の田村さんが。


 胸元に『くるみ』の名前もきちんと入っている。

 これぞ神器・旧スク水。


 はち切れんばかりの胸が大きくて、ちょっとキツそうだ。川のように流れる背中のライン、それと安産型のヒップ。最高に……エロい。

 スラっとした白い手足がまぶしいぞ。


「…………」

「ちょ、ジロジロ見ないでよっ!」

「田村さんってスタイル抜群だよな。過去の配信で何度も見て知ってたけど」

「も、もう! 嬉しいけど、すっごく恥ずかしいんだから!」


 いや、マジで。

 グラビアアイドルと言われても違和感のないレベルだ。今更ながら、こんな可愛い田村さんがなんで俺なんかと仲良くしてくれているんだ? 実は天使なんじゃないか?


 いかんいかん、脳内が煩悩で満たされそうだ。……退散せよ、邪悪な心よ。



「よ、よし。さっそく配信するぞ。その状態でゲームをプレイしてみよう」

「えー!! うそー!!」

「人気者になりたいんだろ?」

「……く、うぅ。がんばる」


 観念したのか田村さんは、歯を食いしばりながらも羞恥心と戦っていた。俺も正直、こんな田村さんを前にしてドキドキしっぱなしだ。しばらく、おかずには困らなさそうだ。

 配信環境を整え、準備したホラーゲームを起動。


 俺は裏でSNSを使い『胡桃が復活したぞ』と情報を拡散していく。これが瞬く間に広まり、配信に視聴者が殺到した。


 おいおい、反応早すぎだろ。秒速かよ!


 視聴者数が3,000、4,000、5,000……10,000とあっと言う間に増えていく。



【お? 胡桃復活~?】

【きたあああああああああああああ】

【胡桃ちゃんカワイイ!】

【どっかのアイドル?】

【美少女すぎィ】

【かわええ】

【またおっぱいポロン希望】

【えちえち】

【おじさんと遊ぼう】

【くーるーみー】

【視聴者数もう15,000人で草】

【おまえら早すぎるって】

【うあああああああ、配信がはじまたああああ】

【お祭り会場はここ?】

【ホラーゲームか。面白そう】



 コメント流れるの早ぇ……。

 マッハかよ。

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