配信18:ホラーゲームかえっちな配信か……!
――ゲームのプレイを終えた。
牧野さんは終始叫んでいた。ホラーに絶叫はつきものだけど、いくらなんでもビビりすぎだ。リアクションは最高だけどね。
「あー…怖かったぁ……」
「お疲れ様、牧野さん。田村さんは……ああ、魂抜けてるな」
昨晩プレイしてかなりヤバかったと言っていたし、隅で怯えていた。
一方、椎名さんはホラーゲームに強いのか、食い入るようにプレイを見ていた。
「放課後は椎名さんがプレイだな」
「見ていて面白そうだったので、すっごく楽しみです!」
こっちは才能がありそうな予感。
昼休みが終わるので、ここまでとした。
「それじゃ、また放課後」
「では、戻りますね!」
椎名さんは一年の教室へ戻って行った。俺たちも戻ろうっと。
昼休みのゲームプレイ、地味に配信させていたが――この平日の時間帯のせいもあるのか、一人しか視聴者はつかなかった。コメントはゼロ。
実質見られていないようなものだ。
チャンネル登録者数がもう少しいれば、二~三人は来てくれてもいいのだが、残念ながら反応なし。
やはり、たった36人では……無理があるな。
あとから聞いたことだが、その36人は牧野さんと椎名さんの家族と友達のようだった。残りは偶然増えたのだとか。
そりゃ、だめだ。
対策を考えつつ、俺は午後の授業を受けていく。
そうして――放課後。
「……やっと授業が終わったかぁ!」
体を伸ばし、俺は席を立つ。すると隣の席の田村さんが「じゃ、行こっか!」とテンション高めに言った。牧野さんも「レッツゴー」と意気揚々だ。
そうだな、今俺に出来ることは配信部の立て直しと校長の不正を暴くことくらいだ。
まずは先に配信部だ。
三人で向かい、部室に到着すると中にはすでに椎名さんがいた。パソコンを立ち上げ、準備万端って感じだ。
「椎名さん、早いね」
「猪狩先輩! それに部長と田村先輩もお疲れ様です~」
椎名さんは、牧野さんと田村さんとも挨拶を交わす。
さて、さっそく彼女にプレイしてもらおう。
「今度は椎名さんの番だ」
「楽しみにしていました! 遊んでみますね!」
ちょうどゲームを起動していたので、そのままプレイしてもらった。
――三十分後。
田村さんは撃沈、牧野さんも失神寸前だった。
どんだけホラーが苦手なんだよ、この二人。それにしても、椎名さんはずっと楽しんでいたな。たまに驚いてはいたけど。
「どうだった?」
「いや~、やられちゃいましたね。コンビニ店員さん、緑の怪人に食べられて死んじゃいました」
ゲームオーバーになったところでゲーム終了。
……ふむ、椎名さんは素質ありそうだな。
「牧野さん、彼女を配信者として育てる方がいいかも」
「うん、私もそう思ってた。早織は喋りも上手いし」
「そうだな、さっき喋りながらプレイしていたけど、違和感なかったし」
あと声もアニメ声で可愛いしな。
実況者向きではある。
「今日はこんなところか。機材もまだそろってないし、また明日ということで」
「ありがとうね、猪狩くん」
牧野さんから感謝され、俺は少し照れた。まだまだスタートしたばかりだけど、とりあえず、三人の配信のスタイルだとか、そういうビジョンが見えつつあった。
でも、俺は田村さんを人気にしたいんだよなぁ。どうしたものか。
その後、部活動終了ということで解散になった。
「またなー!」
「お疲れ様でした~」
椎名さんは先に返った。
「私も帰るねぇ」
部長である牧野さんも椎名さんを追いかけていく。
俺たちも帰るかな。
「行こうか、田村さん」
「うん、あのね……」
「ん?」
「う……家に寄っていかない?」
「へ!?」
「ほら、胡桃を復活させなきゃでしょ。だから……マンツーマンで指導して欲しいっていうか」
「え……でも、いいのかい?」
「わたし、本気にならなきゃって思ったからさ」
どうやら、ホラーゲームが全然プレイできなくて自分自身にショックだったらしい。確かに、このままではまともな配信はできないな。
「やっぱり、田村さんはえっちな配信がいいかもね」
「な、なっ……と、得意な方ではあるけど、猪狩くんを前にすると恥ずかしいよ!」
顔を真っ赤にしてしまう田村さん。
羞恥心とかあったんだな。
「もう一度試しにやってみるとか」
「猪狩くんの前で出来るワケないじゃんっ!」
「今度はチャイナ服とか」
「ばか! えっち!!」
他に手段はない気もするけど、またアカウントBANされるのもなぁ。
「悪かった。でも検討よろしく」
「う~ん……分かったけど、やっぱり恥ずかしい!」
……田村さん、可愛い。
「と、とにかく家へ?」
「そ、そうだね。わたしの家に案内するね」
案内もなにも一度行っているんだがな。あの豪邸に入れるのか……楽しみだ。
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