不法投棄された家具

 不法投棄された家具を見たことはあるかな。野ざらしに置かれて色あせてぼろぼろになった家具さ。家具や家電なんかがあるよね。いらないものだから捨てられたんだろう。そんな家具を拾っていく人はいないだろうね。

 もし、捨てられたものの中に君の欲しいものがあったら持っていこうと思うかい? 勝手に捨てるのも拾うのもいいことではないか。僕はその不法投棄された家具にまつわる話をするよ。


 僕の近所にはずっとなにもない土地があるんだ。僕が幼稚園の頃からずっとだよ。手入れのされていない土地は普通、雑草で荒れ果てているよね。でもその土地は土があるというのに、草の一本も生えてこないんだよ。近所の人は不気味がっていたよ。子供たちも寄り付かなかったね。


 ある日、その土地にきれいな家具が置かれはじめたんだ。タンスやソファ、冷蔵庫やテレビ。野ざらしの場所に置かれているのに、新品同様にきれいなんだよ。最初は土地の持ち主が帰ってきたのかと思ったけど、ずっとそのまま放置されているんだ。大雨の日も風の日もさ。でもその家具は常にきれいだったよ。不思議だろう? 

 でね、その家具たちは不法投棄されたものだと噂され、ある人がちょうどタンスが欲しかったと持って行っしまたんだ。そしてその人は死んだよ。タンスの下敷きになってね。


 その人の死因は何だと思う? 圧死と思うだろう? 違うんだよ。その人は、首を絞められて窒息死したんだ。その首の跡が不可解でね。手形がくっきり残っているんだけど、普通の手じゃないんだよ。骨のような跡。まるで骸骨に首を絞められたような跡がついていたんだ。

 僕は、あの土地に置かれている家具は普通じゃないと思ったね。僕はますます土地に近づかなくなったよ。呪われていると思ったからね。


 数日後、僕の家のテレビが壊れたんだ。その日は野球中継があってね。父は落ち込んでいたよ。テレビが壊れた時はもう家電屋さんも閉まっていたから、野球が見れないとね。

 落ち込んでいた父は急にいい考えがあるとひらめき、外に出ていったんだ。しばらくすると両手に大きなテレビを抱えて帰ってきたよ。母驚いて、どこから持ってきたのか聞いたんだ。父は答えたよ。近所の土地から借りてきたって。あの呪われた土地のテレビを持ってきたんだ。母と僕は反対したよ。すぐに戻して来いって。でも父は、野球を見たらすぐ返すといって設置をやめなかったんだ。


 テレビの電源をつけると、野球中継をきれいに映していたよ。父はビールを持ってきて間に合ったと喜んでいたね。母は呆れ、僕はテレビが怖くて離れたところから様子を見ていたんだ。

 父がテレビの前に座った瞬間、テレビがぐらぐらと揺れ始めたんだ。倒れるのを防ごうと父が近寄った瞬間、勢いよく父の上にテレビが倒れたよ。テレビの下で、父はじたばたしていたね。


 物音を聞いて駆け付けた母と僕でテレビを起こそうとしたけど、全く動かない。まるで鉛のような重さなんだ。大きなテレビといっても、薄型テレビだったからね。女性と子供の力でも起こせないのはおかしいだろう? 

 僕は何か引っかかっているのかと、かがんでテレビの下を覗き込んだんだ。そこで僕は信じられないものを見たよ。テレビの画面から白い手、骨の手が伸びているんだ。その手は父の首をつかんでいた。しばらくもがいていた父がおとなしくなると、さっきまであんなに重かったテレビが簡単に起き上がったんだ。


 父は死んだよ。窒息死さ。首にくっきりと骨の手跡を残してね。これが僕の体験した怖い話だよ。よくわからないものは、勝手に拾わないほうがいいね。

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