願いの叶う鏡

こんにちは。さっそくですが、あなたは成績優秀ですか?なれるならなりたいと思いませんか?努力もなしに。わたしはその方法を知っていますよ。


公園に公衆トイレがありますよね。そのトイレの鏡にお願いすると願いが叶うという噂がありました。午前二時二十二分二十二秒に鏡に手をついて、願いをいうと叶うらしいのです。あるホームレスがその鏡にお願いしたら、企業に成功したという話もあるのです。どうです?あなたもやってみたくなりましたか?


わたしには天田という友達がいます。いつも赤点をとっている子でした。とうとう次のテストで赤点をとったら部活を止めさせられると嘆いていました。そしてわたしに噂のトイレの鏡にお願いするなんていうのです。そうとう追い詰められていたのですね。そんな噂を信じるなんて。わらにもすがりたい気持ちだったのでしょう。しかし彼は真剣でした。


次の日、彼はいつもの彼と違いました。先生からの質問に的確に答え、小テストも余裕でした。なにより次の学年テストで満点をとり、学年一位になりました。わたしは驚きましたよ。彼にどうしてそんなに勉強が出来るのかを聞くと、あのトイレの鏡にお願いしたというのです。信じられませんでした。同時にうらやましくもありました。だって彼は勉強しているそぶりもなかったのですから。

すると彼は君もこの成功を味わおうと一緒に公衆トイレに行こうと言い出したのです。そのときわたしは彼の冗談だと思っていました。でも興味はありました。


夜、自分の部屋で本当にくるのかと疑いながら待っていると窓からコンコンと叩く音が聞こえました。私はアパートの一階に住んでいたので、窓を開けると天田が外に立っていました。彼は本当に迎えに来たのです。

早く行こうと彼はわたしの手を引っ張ります。家族に気づかれないようにこっそり抜け出し、彼とともに公園を目指しました。


公園は街灯で照らされていましたが、昼間の時と雰囲気が不気味でした。トイレの明かりにたくさんの虫が集まっていて気味が悪かったですね。

わたしは鏡の前に立たされ、天田は腕時計を見ていました。待っている間はとてもドキドキしましたよ。どうなるのだろうと。実際の時間は10分ほどでしたが、長い時間に感じました。


——いまだ!


彼のかけ声とともにわたしは鏡に手をつきました。すると鏡に引き込まれるような感覚に陥りました。体に変化はありませんでした。むしろすがすがしい気持ちになりましたね。それからわたしは彼とともに学年のトップですよ。親もとても喜んでくれました。


どうですか?あなたもトイレの鏡にお願いしたくなったでしょう?ただデメリットがありまして。鏡をまともに見ることができなくなります。冴えない前の自分の顔が鏡に映るのですよ。本当ですよ?見てみますか?ほら、鏡をのぞいてみてください。



——助けて!ここから出して!ぼくはここだよ!



ほらね。見えたでしょう?鏡を見るたびにこれでうんざりしますよ。毎日泣いています。私に助けを求めるのですよ。これは以前のダメなわたしです。これが鏡に吸収されたことで、今の完璧なわたしが生まれたのですね。

鏡を見るのが不便ですが、でも我慢できればバラ色の人生が待っていますよ。あなたも自分の嫌なところがあるでしょう?鏡にお願いすればなりたい自分になれるかもしれません。


どうですか?あなたも夢を叶えたいと思いませんか?もし興味があるのなら、私が今夜迎えにいきましょう。

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