猫の集会

あなたは動物が好きですか?私は苦手ですね。とくに猫が。あのかわいらしい姿には裏があると思うんです。でも動物が苦手な私も犬を飼っていましてね。タロウという名前です。

ある日タロウと散歩していたとき、タロウが強くリードを引っ張るものですから、私は転んでしまいましてね。リードを思わず離してしまったんです。タロウは森の中に走って行ってしましました。私はあわてて追いかけたのですが、タロウの姿はありません。タロウ、タロウってずいぶん探したんですが見つからず暗くなってきたので、今日は諦めて帰ることにしました。すると、足下にスリスリと何かがすり寄ってくる感覚がありましてね。タロウ?と足下を見ると猫が一匹いたんです。とてもかわいい三毛猫でした。しゃがんで猫を撫でると猫はスッと私の足下から離れました。もういいのかなと思っていると、ねこは少し進むと振り向いてこちらを見るんです。私は、猫の方に思わず進みました。すると猫はまた少し歩くとこちらを振り向きます。まるで私をどこかに連れて行こうとするように。もしかしたら、タロウの居場所を知っているのかもと、馬鹿馬鹿しいですが私はそのとき本当にそう思ったんです。私は猫について行くことにしました。しばらくすると、木の生えていない場所に来ました。そこは雑草が茂った草むらでした。その草むらから猫が一匹ひょこっと出てきました。よく見るとたくさんのねこがそこらにいます。私は思いましたよ。ここは猫の集会場なのではないかと。私は集会場に連れてこられたんです。ねこがたくさん私の方に近づいてきました。どの猫も人なつっこい猫で私はたくさんなでなでしました。でももうあたりは薄暗くなっていました。このままでは足下が見えなくなって危険だと思いました。タロウもここにはいないみたいですし、猫たちにバイバイと別れを告げました。すると、猫が一匹私に飛びかかってくるんです。それから次々と猫が私に飛びつき、あのざらざらした舌で私を嘗めはじめました。一体どうしたのだろう。そう思っているとその嘗める力が強くなり、痛みを覚えましたよ。私が痛くて暴れると、こんどは猫が次々と私の体に噛みつき始めました。もう痛いどころの話ではありません。私は振り払おうにも猫の数が多すぎて身動きがとれませんでした。私は一匹の猫と目が合いました。その目はギラギラと光り、獲物を狙う鋭い目つきです。ああ、私はこの猫たちに食べられてしまうのかと諦めたそのとき、ワンワンと森の奥から犬の鳴き声が聞こえてくるではないですか。すると猫は一斉に私から離れ、森の奥へ去って行きました。呆然としていると、ペロペロと私は頬を嘗められました。そこにはタロウがいました。私はタロウの姿を見ると安心し、自分の体を調べました。体は爪で引っかかれた跡と歯形でたくさんです。そして私は自分の左手の人差し指がないことに気づきました。猫が人差し指を食いちぎったんです。もうこの日から猫が恐ろしい動物だと思いましたよ。指は地面に転がっていました。指を拾おうとしたら、タロウが先に指をくわえて、そして食べてしまいました。そのタロウの目はギラギラとあの猫と同じ獲物を狙う目をしていたんです。タロウは今も元気にしています。私は精一杯お世話をしていますよ。タロウに食べられたくないから、機嫌を損ねないようにしています。

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