不思議なお祭り

怖い話じゃないですが、ぼくが子供のころに体験した話をします。

子供の頃、森で迷子になった時の話です。母を探して泣いていたら、地面にお面が落ちていました。それをぼくは拾って頭につけてみたんです。そしたら急に陽気な音楽が聞こえてきまして。何だろうとその場所に行ってみました。森の奥へ進んでいくとそこではお祭りをやっていたんです。人もたくさんいたのでぼくはそこに行きました。人々はみんなお面をしていましたね。ぼくの拾ったお面と同じ物をしている人も見かけました。この祭りで売ってたお面だったんです。ぼくはその場をキョロキョロしていたんですが、ひとりの男の人が桃を差し出してきて、食べないか?と言われました。とても大きくて立派な桃でしたよ。でもぼくは桃にアレルギーがありましてね。食べると体中がかゆくなるんです。小さかったぼくは食べるとかゆくなる桃が嫌でその場をなにも言わずに走って逃げました。今思うと失礼な子供ですね。その人は一人のぼくを心配して声をかけてくれたのに。

お祭りの場には川が流れていて、そこでは船に乗る体験が出来るみたいでした。そこはとても人気でものすごい行列でしたよ。長い長い蛇のような列でした。人々はみんなお金を払って乗り込んでいましたね。その様子を端でみていたら、船の船頭さんらしき人がぼくに気づいて声をかけてきました。お金はいらないから乗ってみないか?って。子供に優しい人ですね。でもぼくは船にいい思い出がないんです。昔家族で川下り体験をしたことがありまして。ぐらぐら激しく揺れる船がとても怖かった思い出です。あのときの恐怖を思い出して、ぼくはまたなにも言えずにその場を逃げてしまいました。

お祭りを一人で歩いているとたくさん声をかけられました。子供が一人でうろうろしているから心配で声をかけてきてくれるんでしょうけど、ぼくは家に帰りたくて入ってきた森の道を探すのに必死で走りました。今思えば、あんなに人がいたのだから声をかけて道を聞けばよかったんです。あのときのぼくは人見知りで、声をかける勇気がありませんでした。お祭り会場はとても広くて、走っても走っても森にたどり着けないんです。走り疲れてその場で座り込むと、人々がぼくを囲むように近づいてきたんですよ。具合が悪いのかと心配してくれたのでしょう。でもぼくは人混みが苦手で耳を塞いで嫌だ嫌だと泣き叫びました。

すると、ここにいたの?と母の声がして目を開けるとぼくは森の中にいました。びっくりしましたよ。だっていままでお祭りの中にいたのに。母にどこに行ってたのと聞かれるので、お祭りに行ってたと答えました。でも母は首をかしげてお祭りなんてやっていないわよと言ったんですよ。あんなに大きな会場だったのに開催を知らないなんて不思議ですよね。小さいときは不安でお祭りを何も楽しめなかったけど、今なら楽しめると思うんです。ぼくはあの不思議なお祭りに行きたくて今も探しています。

どうです?あなたもぼくと不思議なお祭りを探して一緒に楽しみませんか?

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