第6話 城下町
「ライリー殿は今おいくつで」
「僕は今18です。それと呼び捨てで構いませんよ」
「ん?ああ、そうだな。ライリー、まだ若いのにフレイヤの専属騎士なんてすごいな!」
「いえ、その、ありがとうございます」
本当はなりたくなんてなかったよ!専属騎士なんて!
「ねぇ、ライリー。私この国に来たのは久しぶりなの。良かったら町を案内してくれないかしら?」
「はい。折角ですので皆さん全員で行きましょうか」
ナイスパスです!リリアナ様!これでフレイ様と王子たちの仲を深めることができる!
「レイリー、私は行きたくないわ!」
コソコソしながら近づいて来たと思えばフレイ様がそんなことを言ってきた。
「駄目ですよ、フレイ様も行かないと」
「どうしてよ」
「実は私、この辺の生まれではないので町のことよく知らないんです」
「ならどうして案内するなんて言ったのよ!」
「相手は王族ですよ?断れませんよ」
「私も王族ってこと忘れてるのかしら?」
「ハハッ…取り敢えず、行きましょう!きっと楽しいですよ!」
嫌がるフレイ様を強引に連れ出し、私たちは今城下町にいる。
うわ〜すごい!城下町なんてほとんど来たことなかったからな〜。
「ちょっと、レイリー!どうして私が案内してるのよ!」
「で、ですから僕は町のことほとんど知らないんですよ!だから…」
「だから、何よ」
「そ、それは…」
まずい、これは大変まずい!王子たちとの仲を深めることに気を取られてフレイ様を随分と怒らせてしまったかもしれない!
「まぁまぁ、落ち着いてフレイヤ」
「私は落ち着いてるわよ!」
「フフッ、ところで少し気になったんだけれどフレイヤはライリーのことをレイリーと呼んでいるのね。どうしてなのかしら?」
「それ、僕も気になりました。どうしてなんですか?」
「それは、別になんとなくよ。レイリーのほうが呼びやすかったし」
「そうだったのね。ねぇライリー、私もレイリーと呼んでもいいかしら?」
「えっと、はい。すきに呼んでください」
「それならレイリーね!なんだか少し仲良くなれた気がするわ!」
僕が女だってバレたわけじゃないからいいよね。それにしても、今日のフレイ様は随分と不機嫌だな。は〜、私のせいかな。
「フレイヤ様、あの、僕に何かしてほしいこととかってありますか?」
「何よ急に」
「えっと、半ば無理矢理町に連れて来ちゃったし、お詫びというかなんというか」
「ふ〜ん、なら最近流行っているりんご飴というのを買ってきて頂戴」
「りんご飴ですか?なんです?それは」
「りんごを飴でコーティングしたものだそうよ。それじゃあ、お願いね」
「俺も一緒に行こう。1人だと大変だろうしな」
えっ!それは駄目だよ!ルーカス様にはフレイ様と一緒にいてほしいのに!
「あの…ルーカス様、1人でも大丈夫ですので…」
「いや、一緒に行こう。ほら行くぞ!」
「えっ、あの…」
はぁ〜、まぁ仕方ないか。まだまだチャンスはあるんだし、次は頑張ろう。
「なぁ、ライリー。今日一緒にいて気になったことがあるんだが聞いてもいいか?」
「はい…なんですか?」
「今日、俺とテオをやけにフレイヤに近づけようとしてなかったか?」
「えっ、…そんなことない、ですよ」
「………」
「…すみませんでした!」
無言の圧かけられたら言うしかないじゃん!
「怒ってるわけではないぞ。ただフレイヤが俺たちを婚約者に選ぶことはないだろうから頑張っても意味がないことを伝えようと思ったんだ」
「意味がない?何故です?」
「詳しいことは言えないが、フレイヤと一緒にいればいずれわかると思うぞ」
「そう、ですか」
どうしてなんだろう?もう心に決めた人がいる、とかなのかな?
「ところで、ライリーはどうして俺達をフレイヤに近づけようとしたんだ?」
「それは…今城で僕とフレイヤ様が恋仲なのではないかという噂が広まってるんです。それで、その噂を少しでもなくそうと思って」
「噂か…ハハッそういうことか」
「えっ、どういうことです?」
「いや、こちらの話だ」
え、1人で納得しないでほしいんですけど。
「ライリー、フレイヤはああ見えて意外と頭がいいんだ。だから気おつけろよ。気づいたらもう逃げられない、なんてことになるかもしれないからな。まぁ、もう手遅れの可能性もあるが」
「えっと、どういうことです?」
「あまり気にするな。頭の片隅にでも入れておいてくれ」
えっ、何?何なの?すっごい怖いこと言うじゃん!てか、気おつけるって何に?もっと詳しく言ってよ!
はぁ、でも逃げられないなんてことになるわけないだろうし、気にしなくていっか。
この後、もっとルーカス様の言葉を重要視して気おつけていれば、と後悔することになるのだが、それはまだまだ未来の話しなのであった。
男装して騎士団に入団したら姫様専属の騎士に選ばれたけど、命令には逆らえません!! 春白 ルナ @357159popoi
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