第2話  始まり

「貴方って女の子、よね」


「はい?」


 私はあの日、人生の終わりを覚悟したが意外にも平和に時は過ぎていった。予想外すぎてこの5日間、姫様に秘密がバレたことなんてなかったかのように、いつも通りの生活を送ってしまったけど、よく考えてみれば今はとても危険な状況だ。姫様が誰かに私が女であることを話してしまうかもしれない。そんなことになれば、私は牢獄行きだ。どうにかして、姫様の口を塞がなければ!


 そう意気込んで、姫様の部屋の前まで来てから、かれこれ30分が経っている。なんの作戦も立てずにここまで来てしまった。やっぱり、一旦戻ろう。うん。それがいい!作戦を立ててからまた来ればいい。話すことも決まっていないのにここまで来る『ガチャ』なんて…


「あら、こんなところで何をしているの?私に用事でもあったのかしら」


「…いえ、たまたま通りかかっただけです」


「そう。ねぇ、貴方このあと何か予定があったりするかしら」


「特にはありません」


「なら、少し私の用事に付き合ってちょうだい」


 と、言われて連れてこられた場所は庭園だった。そして今、私と姫様は2人で紅茶を飲んでいる。


「あの、姫様。これは一体どういうことでしょうか」


「ティータイムのお相手がいなかったし、ちょうど、貴方と話したいことがあったの」


「そうでしたか。それで、話したいこととはなんですか?」


「まず、貴方が女であることについてだけど、誰かに話すつもりはないわ」


「本当ですか!」


「ええ、だけど1つ条件があるの。聞いてくれるかしら」


「はい!どんな条件でもお聞きします」


「それなら良かったわ。条件は、私の言うことは絶対ということよ。もし、この条件が守れなかったら、私は貴方のことをお父様に報告するわ。これでもいいかしら?」


「はい、大丈夫です」


「なら成立ね。このことは、私と貴方だけの秘密よ。これからよろしくね」


「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」


「それじゃあ早速だけど、私のことは姫様じゃなくて『フレイ』と呼んでちょうだい」


「えっ、流石にそれは馴れ馴れしすぎるので…」


「2人でいるときだけでいいから、呼んでちょうだい。お願い!」


 くっ、そんな子犬みたいな目で見られたら…


「わかりました。…フレイ、様」


「もう!様はつけなくてもいいのに!まあでも、それでもいいわ。それと、貴方本名はなんて言うの?」


「えっ、どうして私の名前が本名ではないと知っているのですか?」


「…なんとなくよ。ねぇ、本名はなんて言うの?」


「レイリーです」


「そう。それなら貴方のことはレイリーと呼ぶわね」


「えっ、ですが…」


「これは決定事項よ」


 はぁ、まあでも私が女ってことは話さないでくれるみたいだし、名前ぐらいならいいか。


 こうして、私と姫様、いやフレイ様の2人の物語が始まったのだ。

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