感謝を込めて 3

「で、一応聞くだけ聞きますが、

何があったんですか?」


「おぉ!

ありがとう♪

助かるよ。」


「まだ手伝うなんて言ってませんよ。」


「まぁまぁ、細かいことは気にするな。」


「細かくないですけど。」


「実はな、イチゴが暴れて手がつけられんのだ。」


「???

もう少しわかるように話してください。」


「あぁ、じゃあ順を追って話そう。

あれは5年前、、、」


「遡り過ぎです!

直近の話だけでいいです。」


あ~、ペースが狂うわ。


「う~ん。わかった。

簡単に説明しよう。

私はイチゴの品種改良を行っていたんだ。

限界まで甘くて、たくさん採れるイチゴを作ろうとしていたんだ。

そして新品種が出来上がったと思ったんだが、とんだ暴れん坊でな。

私だと近付くことも出来ん。」


「あ~、なるほどね。」


この世界には植物とモンスターの区別も曖昧だ。トレントやマッシュルームマンなど植物系のモンスターも多数いる。


まあ、普通はこの世界でも、その境界を超えるような品種改良なんてしないけどね。


「じゃあ、その暴れてるイチゴを倒したらいいの?」


「ただ倒すんじゃなくて、果実も収穫して欲しいんだ。

サンプルとして確保したいし、

なにより甘くて美味しいはずだ!

食べたい!!」


むちゃくちゃだな、、、


「でも、たかがイチゴでしょ。

魔王がわざわざ行くほどのこともないんじゃない?」


「いや、かなり危険だ。

養分を吸い取る能力が異常に高い。

ヤツの周囲は凄まじいスピードで砂漠化が進んでいく。

このまま放置すれば、魔王城の周辺は植物の育たない枯れ果てた大地になってしまうぞ。」


「なんてイチゴを作ってんだよ!」


「テヘッ」

テヘペロするいずみ。


「おぇ」


「失礼なヤツだな。」


「当たり前でしょ。

自分の年齢を考えろよ。」


八木いずみ

先代魔王。

俺が約10年魔王をやっている。

いずみさんも約10年ほどやったらしい。

そして、魔王になった時、既に大学院を卒業し、研究者をやっていた。


つまり、、、どう考えても40代後半以上。

俺の予想だが、見た目年齢から考えて、

おそらく30代前半に魔王就任。

そして20年経過。

見た目は止まっているが、実際は50歳を超えているはず。


さすがに女性に直球で年齢の話題は出来ないので確認はしていないが、悪くない予想だと思う。


「仕方ない。メキラ、エリー、行くぞ!

リノアは留守番を頼む。」


「お土産お待ちしております。」

いつもより深めに礼をして俺たちを見送るリノア。


イチゴ退治に出発だ。

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