感謝を込めて 4

八木農場。

魔王城のすぐ近くにある農場。

いずみさんの実験農場だ。

花精たちがいずみさんのお手伝いをしている。そして、俺のランチの食材になっている。



なお、いずみさんは魔族に嫌われている。

だから、俺以外に頼れる相手はいない。

理由は簡単だ。

いずみさんは魔王の在任中、魔王としての仕事を一切行わず、研究に没頭。

更に品種改良した苗を人間にプレゼント。

本人は新品種の生産性確認のために行ったのだが、人間の食糧問題も大きく改善。

食糧を確保出来た人間たちは意気揚々とモンスター討伐に邁進。

そんなピンチを当の魔王いずみさんはまったくの無視。

人間の進軍よりも研究を優先。


結果、人間の領地は大きく広がり、モンスターの領域は狭くなってしまった。

そして、いずみさんは魔王という立場をはく奪された。


本来は処刑されるところ、俺が助命を要請した。

当時はここまでの研究バカとは思ってなかったし、人間が近くにいる安心感も欲しかった。そのため、モンスター側の食糧問題解決のために働かせるという条件で、助命してもらった。


確かに研究者としては有能だが、

他の部分が残念過ぎる。

今は魔王城の近くに置いたことを後悔することの方が多い。



・・・ということで、

「農場到着だな。」


俺、エリー、メキラ、いずみさんの4人だ。

リノアは留守番。

単純に暴走モンスターを倒すだけだからね。


エリーも、今回留守番でも良かったのだが、残念なことにいずみさんと仲が良い。

エリーは研究者肌なところがある。

話が合うんだろう。

一緒に来た。


「大変なことになってますね、、、」


「あぁ、大暴れだな。」


いくつものハウスがなぎ倒されている。

悲惨な状況になっていた。


そして、その中心にはイチゴ(?)。

いや、絶対イチゴじゃないだろ!?


イチゴって普通は小さな草だよな。

なんだよ、あのデカさは!

ドラゴンか、それ以上だ。

森そのものが暴れているような感じだ。

某特撮怪獣映画にこんな怪獣いなかったっけ?


「あれを倒すのか、、、」


「大きいですね。」


「いや~、私が魔王城に行ってる間に、更に大きくなっちゃったわね。」


気楽そうに言ういずみさん。


「よし、メキラ、頼むぞ!」


「・・・燃やす?」


「ダ、ダメです~!」


「燃やしたらダメよ。

イチゴの果実は出来る限り収穫して。

そうね~、枝をどんどん切り落として、幹を粉砕すれば倒せると思うわ。

それと、倒した後は根っこごと引き抜いて、それから燃やしましょ。

根っこが残っていると復活する可能性があるから。」


「枝を切り落としてからイチゴの収穫じゃダメなのか?」


「おそらく果実が崩れちゃうわ。」


あ~、もうツッコミを入れるのもバカらしいが、なんでイチゴに枝や幹があるんだよ。


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