第8話 なあにいけない子ねぇ

 菜津子なつこの体の動きに、教子のりこ先生は、ずっと甘い声で

「なあにいけない子ねぇ」

 ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。

 「ふふーん」

 「鼻音」から、少し声が漏れる音で。

 いきなり、ばん!

 というより「むぎゅっ」?

 きゃ、と、今度は悲鳴が漏れる。

 背中の後ろから両方の胸のふくらみを押さえられた!

 ずずずずずっ、と背中を移動して行く、教子先生の体。

 セミロングというには長くなりすぎた菜津子の髪を通り越して首の後ろに伝わる、教子先生の息づかい。

 そして、背中に感じられる、教子先生の胸。

 安心していい。

 教子先生より菜津子のほうが胸が大きい。

 先生のはぺっちゃい。

 そう安心したとたん、ぎゅっ!

 「うぐわっ!」

 今度ははっきり叫び声が出た。

 そして弱い声。

 「なんでこんなに大きいのかしらね、菜津子ちゃんの胸」

 どうして弱い声?

 そう思って振り返ろうとしたところに。

 うぎゅっ!

 痛み!

 痛、痛、痛、痛、痛、痛っ。

 教子先生の揉みのリズムは、菜津子自身の倍ぐらいだ。

 それに、力も強い。

 「どうしてこんなに大きいのかしらねぇ?」

 それは先生に楽しく揉んでもらえるように、ですっ!

 そんな答えが頭に浮かび、いや、そんなに大きくないはず、ということばがいてきて、菜津子の体から力が抜ける。

 うーっ、と傾いて、教子先生の体が倒れる。

 もちろん菜津子もいっしょに。

 「うーっ」

 教子先生の息は短くなってきている。

 「ふふふぅーん」

 教子先生の左足が後ろから回り込んで菜津子の足をとらえる。

 あの革のスカートは短い。教子先生の足は長い。だから。

 ここに将来は子どもをやどすんだろうな、という、教子先生のしっかりしたおなかの下半分が菜津子のお尻を圧迫する。

 着実に圧迫する。

 そして、いきなり。

 ぎゅっ!

 「うぎゃっ!」

 その悲鳴を上げた口が、ぽん!

 「うぷ……」

 「んふふふふふふん」

 「んーんんーん、んんーんんーん、んーん!」

 だめだ。

 顔を動かし、肩を動かし、胸を振って逃れようとしても。

 教子先生の両手は、しっかりと菜津子の口をおおっている。

 「うふふふふん」

 楽しそうな笑い。

 「菜津子ちゃんの肩甲けんこうこつの感じ、ぐりっ、ぐりっとしてて、気もちいーっ!」

 それは、せているから。

 「そして、このむねよこの感じもぉ」

 先生はひじのところの肌で、菜津子の胸の横側を感じているのだ。

 息が苦しいんだけど!

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