第18話 リュノの里の希望

 朱里ちゃんから頼まれた魔力譲渡だけど…結論から言うと、朱里ちゃんにはもう一度譲渡することにした。

なぜなら、リュノがあっちの世界に戻った後どうなって、こちらにどういった理由で再度訪れたのかをまだ聞いていなかったので、また通訳状態で朱里ちゃんに情報共有するのが面倒だったからである!…あれ結構しんどいんだよね。

それと今後のことを考え、魔力譲渡の量と継続時間をしっかり計っておいた方が良いかなと感じたのもあった。


 ちなみに、もう一度魔力譲渡するときに、朱里ちゃんは目を閉じ、顔を真っ赤にして「ふっ!…んっ!」と声を漏らさないように耐えていた。

……前回の印象は感じているような声だったけど…あの時は場の流れで無理矢理ああいった方向に朱里ちゃんがもっていったかもしれないし、実は痛いのかもしれないしなぁ…さすがにどうなの?とは聞けないし、何にせよ体に負担があるようなら気に懸けてあげないといけないな。

なお、それを見てたリュノも『私にもちょうだい』と言ってきたので、魔力を渡しておいた。リュノの様子も朱里ちゃんと同じような感じで、声が漏れ出そうになるのを我慢して顔を紅潮させていた。

終わったあと2人で頷きあっていたのでとりあえず大丈夫そうだけど…めっちゃ腹減ったよ!


 そうして、用意が整ったので改めてリュノに説明してもらうと、魔力コーティングした食べ物(ウィンナー)はリュノの里(フーリル族の里)の他の人が食べても魔力が増えたらしく、里全体がお祭り騒ぎになり、俺が協力可能なら是非お願いしたいってことになったらしい。

で強力可能であればってことなんだけど、まずはどんな食材が良いのかリュノと探って…魔力量、値段、手に入り易さ(量)、運搬のし易さってところかな?…そしてお勧めの食材をコーティングしたものを送って欲しいってことだった。

なお扉から先の運搬は、祠に転移装置を設置可能なので、考えなくて良いらしい。

そして将来的な試みとしては、あちらの世界でこちらの作物を育ててみたいそうだ。


『ひとまずそんなところかな。で対価なんだけど、姫様からは、可能な限り希望に応えるから、欲しいものがあったら言って欲しいって伝言を承っているよ。あとさんにはぜひ里に来て欲しいって』

『うぇっ救世主!?期待値高すぎない?止めて欲しいんだけど…』

『ハハハッ柄じゃないよねー』

『それにしても、まだ上手くいってもないし、俺のことも良く知らないのに凄い歓待ぶりだなぁ』

『それは私がしっかりとカズマのことを伝えたからかなー?ほら、私も里ではそれなりに実力者で信頼されてるし。感謝してくれて良いよ?』

『……やっぱり相当追い込まれてるんだな』

『そうみたいね』

『おーいっ!私への評価は?ねぇ?』

『あーでもリュノの里には行ってみたいかも』

『その時には私も絶対付いて行くからね!』

『ってか、カズマのノリに合わせて朱里ちゃん放置しないで!?私の立ち位置が変な風に固定されそうで恐いんだけど!?』

…リュノよ、多分遅かれ早かれポンコツ固定だと思うぞ…

『フフフッ、リュノさんごめんなさい。大丈夫ですよ』

『あーありがと』

『もう固定されていますので』

『ぎゃー!!』

…朱里ちゃんさすがである。


『それにしても対価か…別にそういうのを狙ってたわけではないけど』

『まぁでも食べ物にしても元手はかかるだろうし、色々と手間もおかけするし、里はホントに助かるので、遠慮なく貰って下さいね。逆に貰ってくれないと心苦しいし、何か変な狙いがあるんじゃないかと疑う人も出てくるかもしれないよー』

『まぁ確かに。でも欲しいものっていっても何があるのか分からないからなー。例えばどんなのがあるのかな?』

『里で候補に挙がっていたのは、あちらの宝石とか貴金属とか、あとはマジックポーチとかの魔道具かなぁ。他には…いや、何でもない』

『おぉ!マジックポーチありなの!?魔道具良いな!俺も使えるのかな?』

俺が激しく食い付いていると、朱里ちゃんが

『リュノさんが言いよどんだ後、赤くなったのが気になるんだけどー?』

とリュノに詰め寄っていた。

『ななな、何でもないですよ!?』

『隠しても和真君が里に行ったらバレるかもしれないよ?』

『う、実は…対価に私をって言ったオヤジがいてね…』

『リュノさんを!?…和真君!リュノさんが異世界人妻になっちゃうよ!!』

『いや、さすがに本人の気持ちを無視してそれはないけどね』

『カズマ…(やっぱり良い人…でも気持ちがあればありってこと?)』

『え~、和真君の理想のあんな姿やこんな姿をしてくれるんだよ~?(ニマニマ)』

『ごふっ!!』


とりあえず、対価は後でじっくり考えることにして、リュノ達フーリル族の魔力回復の検証と、空腹と吐血ダメージを受けたのを回復するために、様々な食材を求めて近所のスーパーに3人で向かうことにしたのだった。

…朱里ちゃんに知られたの致命傷すぎる気が…

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