第16話 リュノと朱里(1)
部屋に入ると、リュノが
『はー無事に会えて良かった。魔道具だけがあってカズマが居ないから凄い不安だったよー』
と若干涙ぐみながら俺の肩に頭を乗せていた。そして
『ねぇ状況とこの子のこと教えて』
と朱里ちゃんを興味深そうに目で追っていた。
朱里ちゃんはキョロキョロと部屋の中を見回したあと、こちらにキラキラと期待した目を向けて
「部屋には何も感じないけど、ねぇ和真君、扉から来た人が居るんだよね?」
と聞いてきた。
「『ここに居るんだけど、やっぱり見えないんだよね』」
リュノにポンポンと軽く触れながら、両方に伝えるため声に出して念話すると、朱里ちゃんはサッと寄ってきて、リュノの居るところに手を伸ばしてきた。
しかし、やはりその手はリュノを素通りし、朱里ちゃんは「む~」と唸っていた。
「『朱里ちゃん、見えない触れないのは後で方法を探るとして…まずはリュノが不安だろうから、朱里ちゃんのことを説明しようと思うけど良いかな?』」
めげずに角度を変えたり、俺の腕とかにぺたぺた触れたりして何度もトライしている朱里ちゃんに言うと、朱里ちゃんも分かったと頷き、一旦手を降ろして少し離れてくれた。
…ふー。朱里ちゃんの手が近づく度にリュノがビクッとして、大きくて柔らかいのが押し付けられるし、さらに朱里ちゃんの手がぺたぺた触ってくるしで意識しないようにするのが大変だった……意識したのバレたら絶対からかわれ続けるだろうしな…
「『じゃあひとまずそのクッションか、ベッドにでも座っといて。お茶とコーヒーどっちが良い?』」
俺の部屋は座卓を中心にベッドやクッションが配置されてるのでそう言うと、朱里ちゃんは
「お構いなく〜」
と言いながらベッドに座った。
そこで
『わっ私はできたらコーヒーがもう一度飲みたい…』
と言うリュノの要望を受けて、
「『じゃあコーヒーにするね』」
と言いながら肩にもたれていたリュノをクッションに座らせようと降ろすと、リュノはクッションも床も突き抜けて地面に落ちていった。
「『あっ…』」
すっかりすり抜けることを忘れてた俺は、同じく油断して落ちたリュノが飛び上がってくるのを抱き上げ、ワタワタしながらクッションに魔力コーティングしてから再度リュノを座らせるのだった。
なお朱里ちゃんはおそらく間抜けに映ってるだろう俺の姿を「ねぇねぇ何してるの?」と言いながら、口元をほころばせて興味深そうに見ていたのだった…くそぉ
その後朱里ちゃんや久門家と小屋のことをリュノに説明し、リュノとの出会いやリュノの世界の状況、今分かっている俺の魔力譲渡やコーティングについて朱里ちゃんに説明した。
ちなみに説明の前に、朱里ちゃんにもリュノの念話の魔法が可能か試してみたが、無理だった。おかげで俺は喋りっぱなしに…疲れたよ。
一通りこれまでの説明を終えて一息つき、次はリュノが改めてここに訪れた理由と状況を聞こうと思っていると、朱里ちゃんが
「ねぇ一度、私にも譲渡やコーティングしてくれない?もしかしたらリュノさん?が見えたりするかもしれないし」
と提案してきた。
…なるほど、それができたら大きいけど、人への干渉か。大丈夫かな?
「『うーん、試してみる価値は大きいけど、朱里ちゃんにどんな影響が出るか分からんぞ』」
「うん、それは覚悟の上。ありがとう、大丈夫」
リュノにも確認のため目配せしてみたが、
『ごめんカズマ。カズマみたいに渡せるの他に知らないし、私にもどうなるか分からないわ』
とのことだった。そりゃそうだよね。
「『あと、譲渡もコーティングも手をかなり近づけないとできないけど、問題ない?』」
こういうことは確認しとかないと後が怖いからね。
「ん?それの何が問題なの?あっなるほどー。これにかこつけて私の胸とか触りたいと?」
そう言って胸を押し上げる朱里ちゃん。
…うぉっ!スレンダーなのに結構あるな!スタイル良すぎない!?じゃなくて!
「『ち、違う!胸触りたいとかじゃないから!』」
慌てて大声で否定すると、朱里ちゃんはニマニマ笑い、リュノの白い目が突き刺さった。
さらにピンポーンと玄関のインターフォンが鳴った。あー先輩だ…。
ドアを開けると
「藤堂~!?胸を触りたいとか言ってなかったか?」
目の吊り上がった先輩が。
「違いますって先輩、そんなことしないですし」
先輩を抑えるように応対していると
「先輩、大丈夫ですよ。心配して頂きありがとうございます」
といつの間にか隣に来てた朱里ちゃんがニコニコと笑いかけ、頭を下げていた。
「そ、そうか、それなら良いんだ」
先輩は朱里ちゃんの笑顔にだらしない顔になり、ドアをパタンと閉めて隣に戻って行った。
その後頭を下げたままの朱里ちゃんから「ぷくくっ」と笑い声が
…この悪魔め
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
思いのほか文字数が多くなったので2回に分けました。
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